こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

カラカラ

otello2013-01-22

カラカラ

監督 クロード・ガニオン
出演 ガブリエル・アルカン/工藤夕貴/富田めぐみ/あったゆういち
ナンバー 15
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

男は心の平安を求めて沖縄に来たはずなのに、思わぬトラブルに巻き込まれる。女は親切で声をかけた男に、夫には感じない安らぎを覚えてしまう。必然のごとく出会ったふたりは道づれとなってそれぞれの人生を見つめ直す旅を始める。映画は、定年退職した元教授と夫の暴力に苦しむ人妻が、お互いに惹かれあいながらも己の生き方に疑問を投げかけていく姿を描く。静かな世界に浸りたいと願う彼が辛い現実から逃げてきた彼女に、新しいステップは人とのかかわり合いの中から生まれてくると教えられていく過程は、南国の美ら海と人々のおおらかさに彩られ、三線が奏でるエキゾチックな音楽がゆったりとした時間の流れをかきむしるような違和感を挟み込む奇妙な効果を上げている。

気功の合宿で沖縄を訪れたカナダ人・ピエールは道に迷っていたところを純子に声をかけられる。ピエールは純子に那覇を案内してもらうが、その後夫に殴られた純子がピエールのホテルに転がり込んでくる。

芭蕉布の工房を取材しようとするピエールに同行することになった純子だが、いきなり夫に追われピエールの感情を害する。一度寝ただけなのに厄介な事情まで引き受けるハメになったピエールの、“タダほど高いものはない”という表情がおかしい。予定外のハプニングに不機嫌になっていくピエールに対し、夫から解放された純子は友人のおばあの話を聞いたり民宿料理や居酒屋のミニコンサートに触れ、元気を取り戻していく。純子もまた東京から来たよそ者、老いてからの楽しみ方を知っている沖縄人のライフスタイルに感化されていく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

自信を取り戻した純子が、「しっかりとした自分を持っている」と思い込んでいたピエールの嘘くさい仮面を見抜き彼に自省させる場面は、何かのフリをしていなければならない都会人とありのままで生きられる沖縄人の違いを際立たせていた。都会人の偏見かもしれないが。あと、芭蕉の茎を割き、薄く剥いて繊維をはがし、糸を紡ぎ、機を織る。その芭蕉布工房の製造工程が非常に興味深った。

オススメ度 ★★*

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