タイピスト! POPULAIRE
監督 レジス・ロワンサル
出演 ロマン・デュリス/デボラ・フランソワ/ベレニス・ベジョ
ナンバー 192
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
数十人のタイピストたちが一心不乱に指を動かし、速さと正確さを競う。成績上位者が勝ち残り、決勝戦は1対1の勝負。正面に相対してお互いの表情を読み、けん制し合う様子はまるで決闘のような緊張感だ。物語はかつて世界中で盛んだった競技タイプに青春をかけたヒロインの成長を追う。ダメOLだった彼女の闘う女への変身は髪形や服装の洗練度で表現され、華やかさを身に付けていく過程が目を楽しませてくれる。しっとりと柔らかな色調の映像は1950年代を意識し、ファッションやクルマ、テニスラケットなどのディテールが時代の空気を再現する。加えてユーモアを忍ばせたシチュエーションの数々はエスプリの極み、何よりデボラ・フランソワが最高にキュートだ。
秘書に憧れるローズは保険会社に試験採用されるが、タイプの早打ち以外はまったくの役立たず。だが彼女の素質を見抜いた社長のルイは、雇い続ける条件としてタイプ大会出場を提案、さっそく彼女を自宅に引っ越させて特訓を始める。
その日からはオンもオフもタイプ漬けの生活。人差し指だけで打っていたローズに5本指打法を叩き込み、用紙を効率よくセットする方法や、ボキャブラリーを増やして単語を予測させるために読書もさせ、さらに長丁場を戦い抜く体力をつけようとランニングも欠かさないなど、もはやスポ根マンガ顔負けの訓練の数々がテンポよく描かれる。一方で、ローズのルイへの思いが恋に変わり、ローズの気持ちを受け入れるべきか突き放すべきか悩むルイも彼女を愛し始めていることに気づく。そのあたり、あくまで禁欲的にならず“勝利も恋も”欲張るところがフランス人の人生に対する取り組み方・楽しみ方を感じさせる。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
地方大会を勝ち進んだローズは、国民的アイドルの前回チャンピオンを倒してフランス大会を制し、一躍時の人になる。そしてニューヨークでの世界大会では彼女にしかできない戦い方で挑む。“アメリカ人はビジネス、フランス人は恋をする”というルイの言葉が、この作品の成功を象徴していた。。。
オススメ度 ★★★★