こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

世界でいちばん不運で幸せな私 JEUX D’ENFANTS

otello2004-10-04

世界でいちばん不運で幸せな私 JEUX D'ENFANTS

ポイント ★★
DATE 04/9/30
THEATER シネスイッチ銀座
監督 ヤン・サミュエル
ナンバー 116
出演 ギョーム・カネ/マリオン・コティヤール/チボー・ヴェルアーゲ/ジョセフィーヌ・ルバ・ジョリー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

子供のときの出会いが分かちがたい絆となり、人生を支配する。そして、運命の人との数十年に及ぶ愛と別れをフランス映画らしいエスプリをちりばめ見終わったあと爽快な気分にさせてくれる映画、のはずだったのだろう。子供が大人に対して他愛ないいたずらを仕掛ける。子供を支配し管理しようという大人に対する反抗やいじめっ子に対する仕返し、というような視点からのいたずらなら感情移入もできるのだが、この二人が仕掛けるのは悪趣味な悪ふざけ。見ていて不快な気分になる。

移民の子といじめられていたソフィーを助けたジュリアン。二人だけの宝物をお互いにやり取りする一方で、相手が提案したいたずらには必ず乗らなければならないというゲームを始める。やがて小学校から高校生、そして大人になってもこのゲームは続けられるが、ソフィーがジュリアンの結婚式を邪魔したことから二人の関係はこじれ、10年間断絶する。

子供時代の愛くるしい二人の表情、輝く瞳は魅力的だ。下品な言葉を口にし、先生の前でわざとおしっこを漏らす。頭が固い大人に対して柔軟な子供の思考という対立の構図がノスタルジーを生み、心地よい弛緩を味わえる。ところが幸せな子供時代が終わりとともにいたずらからはユーモアが消え、お互い相手が不快になるような要求ばかりする。不快になるのがこの二人だけならよいが周りの人にまで迷惑をかけ、挙句の果てはジュリアンの結婚式をぶち壊すなど言語道断。これがこの二人がお互いに好きという気持ちを素直に言えないことの裏返しとしたら、あまりにも幼稚で短絡的だ。

お互い家庭を持ち幸せに暮らしていた二人は35歳になってまたゲームを再開する。自分たちのルールだけを尊重し、周りの人間の気持ちなど一顧だにしない二人には「成熟した大人の国」の姿は微塵もない。名曲「バラ色の人生」とともに二人は人知れずコンクリート詰めになるというのは、二人の人生にとっては最高の幸せ。最後のとも白髪の映像は蛇足だった。


他の新作を見る