こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

僕はラジオ RADIO

otello2004-10-08

僕はラジオ RADIO

ポイント ★★★
DATE 04/10/5
THEATER シャンテ・シネ
監督 マイク・トーリン
ナンバー 117
出演 キューバ・グッデンJr/エド・ハリス/デブラ・ウィンガー/アルフル・ウッダード
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

知的障害を持った青年が周囲の理解に助けられ、やがて彼の人を疑うことを知らない心が周りの人にも伝播していく。本当にステレオタイプといっていいほどの障害者モノだ。善意に満ちた人々と、少数の偏見を持った人々。彼を助けようとするフットボールのコーチは根気よく理解を求め、やがて誤解を打ち砕いていく。青年自身もその期待に応えようと懸命に生きる。実話を元にした映画で、知的障害者のモデルとなった人物も存命中であれば、あまりマイナスイメージになることは描けないだろうが、この作品に描かれたエピソードはあまりにも毒がなさすぎ、キレイ事にしか見えない。

いつも街中をカートを押しながら徘徊している知的障害をもった黒人青年。別に悪いことをしたわけではないが町の住民からは白い目で見られることもある。ある日、高校フットボール部の練習中にボールを拾ったことからコーチの目にとまり、フットボール練習の手伝いを始める。やがてチームに溶け込んだ彼はレディオと名づけられ、コーチの指導のもとで高校にも通い始める。

演技派といわれる俳優はキャリアのある時点で障害者を演じたがるものなのだろうか。その障害者にどれだけなりきっているかがこの手の作品の成否を握っている。その意味では、キューバ・グッデンJrは話し方から歩き方、身のこなしから表情までそつなくこなしている。しかし、だからこそレディオという青年がもつ悩みなどをきちんと描いて欲しかった。たとえば彼にも性欲はあるだろう。障害者の性欲を邪なものとしてまったく触れないというこういう映画の姿勢が、障害者の性という問題にフタをしている。

もちろんこの映画はそういうことに疑問をはさんだりしない青少年向けに作られている。登場人物は皆善人で、多少のいたずらはするが、悪意を前面に出すものなどいない。だからこそあまりにも純真なレディオの姿ばかり見ていると、現実はそんなものではないぞと思わず突っ込みを入れたくなる。


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