こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

靴に恋して PIEDRAS

otello2004-10-11

靴に恋して PIEDRAS

ポイント ★★*
DATE 04/10/8
THEATER シアターイメージフォーラム
監督 ラモン・サラサール
ナンバー 118
出演 アントニア・サン・ファン/ナイワ・ニムリ/ヴィッキー・ペニャ/モニカ・セルベラ/アンヘラ・モリーナ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

マドリッドで暮らす5人の女性の愛と別れ、そして再生する姿を活写する。無関係の5つの物語が並列に語られていくうちにクライマックスで1本の糸に縒り合わされ、収斂する。その間5人の関係の説明は極力省かれ展開が読めないが、個性が際立っているので混乱することはない。ただ、スペインでは同性愛が珍しくないのか、愛し合う恋人が男同士だったり、異性愛者が次には同性愛に走っていたりして混乱する。

知的障害をもつ女と看護士の恋、高級靴店に勤めながら売り物を靴を盗む女の恋人との破局、その靴屋で靴を買う夫との仲はすでに冷めてしまった人妻、その夫が通うクラブのオーナーママは知的障害者の母親、そして2人の血の繋がらない子供に手を焼くタクシードライバー。みな、人生に疲れているようでそれでも生きる希望を探しながら生きている。あるとき知的障害の女が行方不明になったことから、5人の運命は動き始める。

この作品では男は徹底して女にトラブルをもたらすものでしかない。男は常に身勝手で、女に悲しみや未練、あきらめや憎しみ与えることしかしない。恋人を一方的に振る男、独身と偽って浮気をする男、死んでもなお妻の心を支配する男。やはりスペインでも女性の地位が低く、この作品を支配する「女尊男卑」的な空気はその裏返しなのだろうか。そして、女に性的な関心を持たない同性愛者だけが善人として描かれる。男はその性的能力を女に向けなくなって初めてまともな人間としての地位を得るのだ。

男という厄介物への思い入れをすべて断ち切った時、彼女たちの人生は再び輝きを取り戻す。本来の自分を取り戻したかのように、男抜きの生活がもたらす幸福。しかし、本当のところはやはり愛する男と一緒に暮らしたほうが幸せになれると思うのだが。彼女たちは自分の身の上に起きた不幸をすべて男のせいにしているところが後味悪かった。

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