こんな映画は見ちゃいけない!

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巴里の恋愛協奏曲<コンチェルト>

otello2005-01-10

巴里の恋愛協奏曲<コンチェルト> PAS SUR LA BOUCHE

ポイント ★★
DATE 05/1/4
THEATER シャンテ・シネ
監督 アラン・レネ
ナンバー 2
出演 オドレイ・トトゥ/サビーヌ・アゼマ/イザベル・ナンティ/ピエール・アルディティ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


ライトな感覚で楽しむ恋のときめき。好きな人には見向きもされず、眼中にない人からは迫られる、一方通行の堂堂巡り。その駆け引きを陽気な音楽に乗せて登場人物が歌うのだが、なぜかその楽しさが伝わって来ない。それはあくまで恋をゲームとしてしかとらえていない軽さから来るのだろう。これがオペレッタといってしまえばそれまでなのだが、胸の高鳴りや痛みといったものを高らかに歌い上げ、恋の素晴らしさを謳歌しなければ、見るものの共感は得られまい。


1925年のパリ、実業家の妻に迫る若い芸術家、その芸術家に思いを寄せる娘、さらに妻の前夫が復縁を迫るなど男女の思いが入り乱れる高級サロン。皆が皆、好意を持つ異性からは相手に去れず苦い思いをしている。そこに御用聞きの男が自分のアパートを芸術家に提供したことから登場人物の思いは交錯しやがて爆発する。


フランス語がわからず字幕に頼っているせいもあるのだろう。歌詞の裏に込められた隠された意味が理解できないとこの作品の本当のおもしろさはわからないのかもしれない。それでもやはり、登場人物の恋する気持ちがホンモノならそれはスクリーンからあふれ出てくるはず。しかし、この作品からはそうした感情の高まりが一向に伝わって来ない。恋している自分にうっとりしているナルシストたちのうぬぼれだけが声高に存在を主張するだけだ。


ヒロインの夫であるフランス人実業家の女性論だけはおもしろかった。妻にする女性は処女でなければならず、妻は最初の男に押された刻印を一生忘れないから夫に従順になる、などというたぶん当時でも時代遅れの自説をとうとうと説くばかばかしさ。しかも結婚するまで処女だと思っていた自分の妻が実はアメリカ人と結婚歴があることを知らない。コメディの設定として唯一秀逸な設定だった。このあたりをもう少し生かしていれば上質なエンタテインメントとして昇華されていただろう。


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