こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

カンフーハッスル

otello2005-01-12

カンフーハッスル 功夫

ポイント ★★★
DATE 05/1/2
THEATER 109シネマズ港北
監督 チャウ・シンチー
ナンバー 1
出演 ユン・チウ/ドン・ジーホ/シン・ユー/ブルース・リャン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


やはりカンフーの本場だけあって、さまざまな流派の技が楽しめる。もちろん荒唐無稽のものばかりなのだが、俳優たちの手の動き足の運びが独特の雰囲気を持つ。中国4千年の歴史に裏打ちされた武術と、脚本は撮影現場で渡されるという香港映画特有の方法論。物語やキャラクターよりとにかく格闘シーンで楽しませようというエンタテインメントに特化したチャウ・シンチーのサービス精神はこの作品でも生きている。


貧民街を配下に収めようとしたギャング団が、カンフーの達人に返り討ちにあう。ギャングは新たに刺客を送りカンフーの達人たちを倒すが、貧民街の家主夫婦は更に上手のカンフー使いで、刺客を倒す。ギャングのボスは新たに中国最強といわれる刺客を雇い、家主夫婦と闘わせる。


この作品のカンフー使いたちはみな強さを誇ることなくつつましく生活している。小市民として生きる彼らがギャングの横暴に怒り、拳の封印をとくところが小気味よい。このあたり中国民衆に古くから伝わる武侠物語が強く影を落としている。また、最強の拳法家・火雲邪神に扮したブルース・リャンが圧倒的な存在感を示す。ブルース・リー世代の生き残りのリャンは、すでに頭にほとんど毛がなく肉体もたるんでいる風采の上がらないおっさんなのだが、その眼光と技のキレはいまだ衰えず、まさに伝説の刺客にふさわしい。


肝心のチャウ・シンチーはしがないチンピラに扮し今回は控えめだが、最後にいきなり武術に目覚め達人に変身する。このあたりがあまりにも場当たり的だ。そして彼が繰り出す技や、黒いスーツを着た軍団と闘ったり空中での一騎打ちなどもはやマトリックスの世界。せっかく中国武術に裏打ちされたアクションを見せていたのに、シンチーの格闘場面になるとハリウッドの向こうを張るような展開となる。シンチーは演出に専念して、もっと本場のカンフーアクションを見せてほしかった。


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