こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

オーシャンズ12

otello2005-01-24

オーシャンズ12 OCEAN'S TWELEVE

ポイント ★★*
DATE 05/1/15
THEATER 109シネマズ港北
監督 スティーブン・ソダーバーグ
ナンバー 7
出演 ジョージ・クルーニー/ブラッド・ピット/キャサリン・ゼータ・ジョーンズ/ヴァンサン・カッセル/マット・デイモン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


知的でクールな登場人物と洗練された語り口で暴力を一切排した完全犯罪は、見ていて気分を軽くさせてくれる。血なまぐさいシーンや下品なシーンもまったくなく、安心して見られるスリラーという点は「オーシャンズ11」を踏襲している。しかし今回は、財宝を盗むためにターゲットを罠にはめる事よりも観客をだますことばかり考えているような脚本のせいで、「11」ほどの爽快感は味わえない。


前作で1億6000万ドルを盗まれたヴェネディクトが、窃盗団全員の居所を突き止め利子つきの返済を求めたことから、オーシャンはチームを再編成する。彼らはアムステルダムで世界初の株券を盗みに入ったが、もぬけの殻。そして、オーシャンは「われこそ世界一の泥棒」と自負するフランス貴族の挑戦を受ける。


それでなくても登場人物が多くて交通整理が大変なのに、今回は窃盗団を追う女刑事や泥棒貴族を登場させているため、泥棒のスペシャリストたちの出番が大幅に減っている。オーシャン、ラスティといった主要メンバーはクライマックスを前に留置場にぶちこまれ、残ったマット・デイモン扮するライナスが中心となってフランス貴族との「泥棒対決」に挑む。これが二転三転するどんでん返しの連続なのだが、ご都合主義のてんこ盛りだ。もちろん後できちんと説明してあるのだが、後付の説明よりも伏線を張るなりして観客の想像力を掻き立てる工夫が脚本にほしかった。


ジュリア・ロバーツに自分自身のニセ者を演じさせたり、ブルース・ウィリスが本人役で登場したりと、楽屋オチ的なおふざけも少し度が過ぎる。なにより前作ではオーシャンの仲間が金庫破りという目的のために収束していたのに、今回は彼らを追う刑事やライバルの泥棒などを登場させ物語を拡散してしまったのが散漫な印象を受ける原因だ。それにしても、12人目の仲間はテスなのかライナスの母なのか。


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