こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

故郷の香り

otello2005-02-07

故郷の香り 暖

ポイント ★★★
DATE 04/10/19
THEATER メディアボックス
監督 フォ・ジェンチイ
ナンバー 124
出演 グオ・シャオドン/リー・ジア/香川照之
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


大人になった男女が成就しなかった若い頃の2人の恋を懐かしむ。変わってしまった昔の恋人。原因が自分にあることを知りながら、その事実と向き合う勇気がない男。女のほうも今の生活に疲れながらも、元恋人と語らううちにいつしか昔の明るさを取り戻していく。年を重ねたものにしかわからない男女の感情の機微を、美しい農村の風景を背後に繊細なタッチで描いている。


10年ぶりにふるさとの村に帰ったジンハーはかつての恋人ヌアンと再会する。ヌアンは生活に疲れている様子で、ジンハーはその責任が自分にあると思い込む一方、ヌアンの家を訪ね昔の思い出を語り合う。それは2人がまだ若く将来に大きな夢を持っていた青春時代だった。


主人公の2人とヌアンの夫・ヤーバを交えた現在の描写はキメこまやかで、心理描写も行き届いている。後悔、あきらめ、小さな満足、義務感、それでも人生をもう一度劇的に変えてみたいという願望。もう若くないけれど、まだまだやり直しが効く年齢の男女の揺れ動く心。そして最後にはやはり一線を超える勇気がなく、分別をわきまえてしまう守りに入った人生。そうした気持ちの揺れをリアリティたっぷりに描写する。ジンハーは折りたたみの傘にメッセージを託す。それを理解しながらも拒否するヌアン。彼女の心をヤーバが敏感に感じ取り、2人に子供を連れて行けという仕草をするシーンにすべての感情が昇華する。


ところがジンハーとヌアンが若い頃を回想するシーンには、イマイチ青春のきらめきに欠ける。ジンハーはヌアンのことが好きで好きでたまらないはずなのに、どうしてその感情を押さえているのだろう。ヌアンの前では押さえていても、どこかで爆発させているはずだ。好きな女の気を引くために、よくもあそこまでアホなことをできたな〜、というような、観客が共感できるようなほろ苦い思い出をなぜ描かないのか。若さの有り余るパワーをもてあましながらも恋にひた走る、というようなエピソードが語られてこそ、青春時代の思い出も輝きを増すと思うのだが。。。


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