こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アレキサンダー 

otello2005-02-09

アレキサンダー ALEXSANDER

ポイント ★★*
DATE 05/2/6
THEATER 109シネマズ港北
監督 オリバー・ストーン
ナンバー 17
出演 コリン・ファレル/アンジェリーナ・ジョリー/ヴァル・キルマー/アンソニー・ホプキンス
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


イラク、イラン、パキスタンアフガニスタン。アレキサンダーが征服したオリエントの地は、現在テロ支援国家大量破壊兵器を持つとブッシュ政権から名指しされた地域。アレキサンダーは征服した土地にギリシア人を入植させギリシア風の文化を根付かせた。征服者と原住民の融合し、国籍に関係なく平等な権利を与える。そういう「地球人」という発想こそが非征服民に支持され、反乱が起きなかった理由だろう。いま、ブッシュ政権は西アジアにアメリカ流の自由と民主主義を布教しようとしている。しかし、お仕着せの主義や理念は迷惑なだけであることが頻発するテロ事件が証明している。


父王が暗殺されたため20歳でマケドニアの王に即位したアレキサンダーはペルシアを破り、やがて10年にも及ぶ大遠征の末、西アジア一帯を支配下に置く。しかし、インドを目前に破れた上に部下の裏切りに会い、失意のうちにバビロンに戻り命を落とす。


この映画における女の扱いはとてもひどい。アレキサンダーの母・オリンピアスはアレキサンダーが幼少のころから彼を洗脳支配し、夫である粗暴なフィリッポス王への復讐を企てる。山岳民族出身の妻・ロクサネも自分の利益しか考えない。アレキサンダーを取り巻く二人の女はともにヘビをシンボルにした奸智に長けた女としてしか描かれない。結局、アレキサンダーは戦上手の統治下手。自分の母や妻にてこずるようでは部下や人民をうまく治めることなどできまい。


暴君と名君は紙一重だ。ギリシア人の優位性を信じる部下にコスモポリタンの思想を説くアレキサンダーの先見性は現代に通じる。ただ、オリバー・ストーンの作品だけにどうしてもその裏にある政治的思惑を読み取ろうとしてしまう。現地人との融和なくして占領統治は難しいというメッセージを、イラクにてこずるブッシュ大統領に送っているようだ。というか、現在の国際情勢とシンクロさせることでしかこの作品の意義は見出せない。


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