こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

THE JUON 呪怨

otello2005-02-16

THE JUON 呪怨 THE GRUDGE

ポイント ★
DATE 05/2/12
THEATER 109シネマズ港北
監督 清水崇
ナンバー 21
出演 サラ・ミシェル・ゲラー/ジェイソン・ベア/ビル・プルマン/石橋凌
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


日本版オリジナルを見ていればわざわざ見るまでもない。ハリウッドリメイクというからには何らかの改変や表現上の進化を期待したが、ただ主要登場人物を米国人に変えただけ。その変更もまったく必然性がない。舞台は東京、のろわれた屋敷も恨みを抱いた幽霊もそのままで白人男女が恐怖の叫びをあげる。ただ、米国市場に受け入れられやすいように主人公を白人にしただけというまったく安易な発想にはあきれてものがいえない。


東京の大学に留学中のカレンは独居老人宅の訪問介護ボランティアをしている。ある日訪れた一軒家ではエマという老女が放心状態で寝たきりになっている。老女はひとり暮らしのはずなのに、カレンはそこで真っ白な顔をした少年と出会う。やがてカレンはその家で過去に起きた惨劇の事実を知る。


ストーリーを楽しむというより、登場人物が体験する恐怖を体感するという体裁はオリジナルと同じ。映像は暗く冷たい。廊下の奥、押入れの中、天井裏など、底なしの闇が支配し怨念の沼がてぐすねをひいて待っているような異界に踏み込む感覚はこの作品でも健在だ。しかし終始おどろおどろしい音楽に包まれているせいで、映像との相乗効果は半減している。米国人向けにはこれくらいしつこく感情表現しないといけないのかもしれないが、過ぎたるは猶及ばざるが如しである。


結局、オリジナルを米国人向けにわかりやすく作り直したにすぎない。これならオリジナルに英語字幕を入れるなり、英語に吹きかえるなりの対応で十分だ。言葉の壁を越えてオリジナルの怖さは伝わるはずだし、こんな粗悪なリメイクを作るのは監督のキャリアに傷がつくとしか思えないし、観客にも失礼だ。


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