こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

フレンチなしあわせのみつけ方

otello2005-04-11

フレンチなしあわせのみつけ方
ILS SE MARIERENT ET EURENT BEAUCOUP D'ENFANTS

ポイント ★★★
DATE 05/4/5
THEATER シネ・アミューズ
監督 イヴァン・アタル
ナンバー 43
出演 シャルロット・ゲンズブール/アラン・シャバ/エマニュエル・セニエ/アラン・コーエン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


何歳になっても人生は恋愛至上主義。3人の中年男が集まれば女の話ばかり。いい女がいればすぐに色目を使い、きっかけを作る。恋愛に対して貪欲で、ためらいもてらいもないパリの男たちは、つまりは人生に対して積極的なのだ。それはまた妻や女も同じ。かっこいい男に心をときめかせ男がつけいるスキを常に用意している。パリに住む男女は異性に対して心地よい緊張感をいつも持ちつづけているからこそ、ライフスタイルを含めて魅力的に映る。


ヴァンサンはガブリエルという美しい妻と子供にも恵まれ、2人の男友達ともいつもつるんでいる。夫婦間は一見うまくいっているが、ヴァンサンはいつしかマッサージ嬢と付き合うようになり、ガブリエルもCDショップで出会った男の後を追いかける。一方で、ヴァンサンの友人・ジョルジュとフレッドもそれぞれ妻や恋人のことで悩みを抱えている。


家族、仕事、友人。それぞれに大切なものを持っている。それでも生活のプライオリティを恋愛に置く人生の素晴らしさ。決して深刻にならず、修羅場のような無粋なマネをしないところが気が利いていていい。ヴァンサンとガブリエルの夫婦喧嘩もいつしかじゃれあいになって最後には愛し合うというところが、成熟した大人のエスプリを感じさせる。


この映画の登場人物はみな、決して背伸びしない等身大の自分を生きている。自分の本能に忠実、なおかつ他人の行動にも理解を示す。「個」が確立したお国柄ならではの人物相関図だ。夫の浮気に気づきながらも怒らない妻。妻もまた他の男とのアバンチュールを夢想する。それは彼らが軸足を家庭に置いているからこそできる振る舞いで、根っこのところでは愛し合っているのだ。もう若くないのに、決して経済活動が第1にこない人生の身の処し方。国民が男であり女でありつづけることがフランスの経済を支えている。それがこの映画を見ているとよくわかる。


他の新作を見る