こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

コーラス

otello2005-04-15

コーラス LES CHORISTES


ポイント ★★★*
DATE 05/4/11
THEATER シネ・リーブル池袋
監督 クリストフ・バラティエ
ナンバー 45
出演 ジェラール・ジュニョ/フランソワ・ベルレアン/ジャン・バティスト・モニエ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


すさんだ学園に赴任してきた教師が熱心な指導で生徒たちの心をつかみ、やがて生徒たちの心に生きる喜びを与えていく。フランス版「スクール・ウォーズ」のテーマは音楽。甘美な歌声に陶酔しながら、これは生徒の変化を通して見た先生の成長物語。愛に見捨てられた少年たちは実は寂しいだけであることを見抜いた男が、彼らに目的を持って生きることを教えながらも、自分もまた少年たちの心のトゲを抜くことを目的とする。その相互補完関係がバランスよく心地よい。


失業中の音楽教師・マチューは落ちこぼれ生徒ばかりが集まる寄宿学校の寮長となる。厳しい校長は厳罰主義を徹底させているが、生徒の心は荒れるばかり。マチューは少年たちに歌を教え、コーラス隊を組織する。最初は反発していた生徒たちもマチューの指導のもと、歌を通して自信を取り戻していく。その中でピエールという少年だけは抜群の声を持っていた。


子供は未来、どんな少年にも無限の可能性があるとマチューは信じている。赴任早々、生徒たちに将来なりたい職業を書かせるが、ばかばかしい夢を含めてすべて肯定する。まず少年たちを受け入れ信じてやる。ひとりの人間として認めるところから始めて信頼関係を築いていく。ストーリー自体はありふれているのだが、50年以上も前のフランスの田舎町という舞台設定がおとぎ話のような柔らかな雰囲気を醸し出している。また、マチューがピエールの母親にほのかに心を寄せるがあっさりとフラれたり、札付きのワルにかき回されたりするエピソードもスパイスとなっている。


校舎が火事になったことからマチューは解雇される。しかし、彼のまいた種は着実に芽を出し育ち始めている。大人が自分の生き方をきちんと示すことで、子供は立ち直れる。ただ、ほとんどの生徒たちが音楽に対して抵抗を持っていなかったのが不思議。彼らに対して音楽の素晴らしさを理解させる過程をきちんと描いて欲しかった。


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