こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

インファナル・アフェアⅢ 終極無間

otello2005-04-18

インファナル・アフェアⅢ 終極無間

ポイント ★★★★*
DATE 05/4/16
THEATER 109シネマズ木場
監督 アンドリュー・ラウ/アラン・マック
ナンバー 47
出演 トニー・レオン/アンディ・ラウ/レオン・ライ/チェン・ダオミン/ケリー・チャン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


細部に至るまで緻密に構成されたストーリーはあらゆるシーンが伏線となって謎が謎を呼ぶ。ワンシーンの無駄もなく積み重ねられるミステリー。登場人物同様、この映画を見た者も謎解きの「無間道」に落ちる。しかしそれは永遠に見続けても決して飽きることのない、至福の「無間道」だ。これほどに完成度の高い「三部作」はかつて存在しなかった。そこに流れているのは、欺瞞と裏切りの中で生きてきた男の誰も信じることのできない苦悩。そして、死んでしまったものよりも生き残ったものが背負う宿命。もはや正気すら失った主人公をアンディ・ラウは完璧に演じている。


ヤンの殉職後も警官としてキャリアを積んでいたラウは、内務調査部で警察内にいるサムの内通者探しを続けている。そんな時、保安部のヨンという男に疑惑を持つ。ヨンは大陸のマフィアやサムともつながりがあり、疑いは増すばかり。しかし、調査を続けるうちにヤンの影がラウに付きまとい、次第にラウの思考は混乱していく。


前2作で描かれたラウとヤンの物語では2人の関係はコインの裏表のように正反対。だが、この作品ではヤンの人生こそラウが歩んだ道、ヤンが背負った宿命こそラウの運命。2人は表裏一体なのではなく、ミラーイメージなのだ。ヤンの精神科カルテを見たラウがそこに自分の姿を見出すシーンは、限りなく美しく悲しい。むしろ、催眠治療を受けている間だけでも熟睡し、キョンという自分を慕う相棒がいただけヤンはましだった。自分の心に住み着いたヤンに操られるようにラウは暴走し、ヨンの罠に落ちていく。


ウォン警視、サム、ヤン。誰も信じることができずいつ自分の寝首をかかれるかと、生きているうちは安眠できなかった男たち。結局、彼らの業をすべてラウがひとりで受け止めて生きていく。その重みに耐え切れなくてラウは自らの命を絶とうとするが、それすらかなわない。生き残ってしまった者の苦悩。体の自由を奪われもはや死ぬことも許されず、思念に日々さいなまれる。無間道の中で生き続けるラウの瞳には永遠の虚無が宿っていた。


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