こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

さよなら、さよならハリウッド

otello2005-05-02

さよなら、さよならハリウッド HOLLYWOOD ENDING


ポイント ★★★
DATE 05/4/26
THEATER 恵比寿ガーデンシネマ
監督 ウディ・アレン
ナンバー 53
出演 ティア・レオーニ/トリート・ウィリアムス/マーク・ライデル/ジョージ・ハミルトン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


最近は労働者や冴えないサラリーマンを主人公にし、演じていたアレン。久しぶりにアーティストを演じるがその皮肉屋ぶりは変わらず、エスプリの聞いたセリフでコミカルに見せる。セレブの世界に生きる人々も本当は小心でワガママ、その奇行の数々を細かく丁寧に描写している。そうした飾らない人間の真実に迫る手腕はさすがで、毎回同じような役を演じているにもかかわらずどこか新鮮味を感じさせるのはアレン自身が変化しているからだろう。


かつて巨匠といわれた映画監督のヴァルは今はすっかり落ち目。そんな時、ハリウッドのプロデューサーになった元妻のエリーから新作のオファーが舞い込む。ところがいよいよクランクインというときに精神的プレッシャーからヴァルは目が見えなくなる。そのまま撮影に入るが、ヴァルの前に次々と難題が持ち上がる。


目が見えないことを隠しながら映画の撮影に入るという無謀な試み。大予算の映画のために延期がきかない。ヴァルにとっては返り咲く最後のチャンス。エージェントやエリーの思惑も絡み、何とか撮影をこなしていく。ただ、ヴァルがいかに変人という設定であっても、映画がこんなに簡単に撮影されるものなのかという疑問は残る。もちろんコメディなのだから深く考える必要はないのだが、それでもこの作品はあまりに現実離れした設定に少しついていけなかった。オーディションを受けさせた自分の恋人とデート中にエリーと鉢合わせするなど爆笑シーンもあったが、全体的に切れ味が乏しく空回りが目立つ。


目が見えないことで繰り広げられるドタバタを通して、ハリウッドのマーケティング主流の映画作りを皮肉っているのだろう。しかし、完成した作品が米国内では酷評なのにパリでは絶賛されるという、自分自身の願望のようなラストシーンにはむしろ嫌味を感じる。ここで「そんな自分も所詮はアメリカの映画監督さ」みたいな自分に対する皮肉があればもっと引き締まった作品になったはずだ。


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