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映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ベルリン、僕らの革命 

otello2005-05-06

ベルリン、僕らの革命 THE EDUKATORS

ポイント ★★★*
DATE 05/1/19
THEATER スペース汐留
監督 ハンス・ワインガルトナー
ナンバー 10
出演 ダニエル・ブリュール/ジュリア・ジェンチ/スタイプ・エルツェッグ/ブルクハルト・クラウスナー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


男同士の友情を壊すのは女、男の人生を狂わせるのも女。ヒロイン・ユールはいつも短絡的な考えと不注意で男たちを窮地に陥れるが、本人は自分の責任を一切感じていない。このバカ女によって道を大きくはずされた2人の男が、それでも何とかピンチを切り抜け、やがて解決していこうという姿勢が好ましい。人生なるようにしかならず、成り行き任せ。理想主義をぶち過激な行動も辞さない彼らの幼稚な一面がこの作品に親しみを持たせる。


金持ちの空家を荒らすが盗みはしないエデュケーターズという賊が暗躍するベルリン。犯人のヤンとピーターはその正体をピーターの恋人・ユールにも隠している。ある日、ピーターが留守の間にヤンはユールに秘密を明かし、資本家の邸に侵入するが見つかる。仕方なくピーターを呼び出した上に彼らは資本家を誘拐する。


いまだにドイツでは青臭い革命論をまじめに論じる若者がいることに驚く。自由が生んだ貧富の格差。金持ちのベンツを弁償するために苦しい暮らしを強いられ夢をあきらめなければならないユールの言葉は説得力がある。だが、体制に反旗を翻し行動する彼らの姿は、単に自分の存在を確認するために社会に反抗しているだけに見える。ただ、彼らの会話の中に成功者を尊敬するアメリカ型の自由とは違う、ドイツ流の成熟した資本主義の考え方がとても新鮮だった。


誘拐した資本家もかって左翼活動家でヤン以上に過激な活動をしてたが、いつのまにか体制側に与するようになったという告白は、もはや左翼の生き残る余地がない現実を物語る。しかも彼らの時代は自由恋愛だったのに、ヤンたちの間では性のモラルだけは保守的になっているという強烈な皮肉。食べることに困らなくなった現代、革命を語るのは反体制を気取る若者の浅薄なファッションに過ぎない。あとはテロリストになるしか体制に反抗することができない「自由すぎる不自由さ」という二律背反をこの作品はシャープに切り取っていた。


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