こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

交渉人・真下正義

otello2005-05-13

交渉人・真下正義

ポイント ★*
DATE 05/5/7
THEATER 109シネマズ木場
監督 本広克行
ナンバー 57
出演 ユースケ・サンタマリア/寺島進/國村隼/水野美紀
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


テレビ的なしつこいカメラワークに饒舌な音楽でいちいち登場人物の心境を解説するという、痒いところに手が届く演出は見ていてとても疲れる。映像と音による過剰な説明は、映画館にカネを払って見に来る客の集中力とテレビの視聴者を同一視しているとしか思えない。その一方でありえないほど統一性の欠けたコンサートのプログラムや映画クイズなどディテールは破綻していてもおかまいなし。観客を子ども扱いするような演出家の姿勢には腹立たしささえ覚える。


クリスマスイブの夕方、東京地下鉄の新型車両・クモが乗っ取られ暴走を始める。犯人は警視庁の真下を交渉人に指名、真下は地下鉄の司令室に乗り込み犯人との交渉を始める。真下は犯人とのやり取りの中で徐々に容疑者の絞り込んでいくが、犯人の目的が明らかになるにつれ、恋人の命が危険にさらされている事に気づく。


ここまでご都合主義がまかり通るとは予想もしなかった。犯人はどうやって新型車両に携帯電話を仕掛けたのか。どうやってトンネル内の携帯に電波を送ったのか。ましてやが恋人とクリスマスコンサートに出かけることや彼も知らないコンサートホールでの席番をどうやって知り得たのか。最初から犯罪者と闘う警察官を描く意図はないことはわかっているが、ここまで細部をないがしろにするとは。


結局、犯人は幽霊、動機も不明。事件は現場の刑事たちカンで解決されるという投げやりな展開。あっと言わせるような仕掛けやドンデン返しを期待したが無駄。「踊る大走査線」の知名度に柳の下のドジョウを狙っただけの粗悪品だった。ところで「オデッサ・ファイル」の答えはなんだったのか。自殺したユダヤ人の日記を手に入れた西ドイツのジャーナリストが父親の仇を討つ話だが、この映画のキーワード「強制収容所」も「復讐」も真下とは何の関係もなさそうだが、これも単に脚本家の思いつきなのだろうか。。。


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