ライフ・アクアティック THE LIFE AQUATIC
ポイント ★*
DATE 05/3/3
THEATER ブエナビスタ
監督 ウェス・アンダーソン
ナンバー 27
出演 ビル・マーレイ/オーウェン・ウィルソン/ケイト・ブランシェット/ウィレム・デフォー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
船酔いにも似た地に足がつかない気分になる。どこか変でどこか新しい。しかしそのセンスが必ずしも心地よいものではない。まともに物語の展開を追っても肩透かしを食らうだけだし、登場人物のキャラクターがみなひねくれているために感情移入できない。計算されているようで理解の範疇を超えた不思議な映画空間。残念ながらそこに長くいたいとは思わない。
海洋学者で映像作家のズィスーの新作映画は見事にコケ、次回作の金策に走り回らなくなる。そんな時、ズィスーの息子と名乗るネッドという若者が現れ資金難を解決、さらに雑誌記者・ジェーンがズィスーのチームに加わり、新たな映画の撮影に入るために航海に出る。
一応前回作のラストでズィスーの仲間を食ったジャガーシャークを追うというのがストーリーの要なのだが、映画は登場人物の奇矯な行いばかりに注目する。父と息子の雑誌記者を巡る恋の鞘当て、海賊にさらわれた仲間の救出。ところが、彼らのズレ方が中途半端でコメディと呼ぶには固いし、洗練されたセンスも感じさせない。時たまあらわれる極彩色の架空海生生物たちも登場人物の何らかの心の動きを反映させているのだろうが、そこから想像できるのもはちょっとずれた風景のみ。それが何のメタファーなのかは最後までわからない。
観客不在、要するに演出家の自由な空想を映像にしたということなのだろう。だが、クリエーターならば自分の主張したいことをきちんと持った上で、何をどう見せるかを考えるべきだ。ジャガーシャークをついに見つけるというラストシーンもどこかコミカルなテイストを漂わせるのだが、だからといってそれが効果を上げているわけではない。結局最後までこの作品の世界のノリに波長を合わせることはできなかった。