こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ザ・インタープリター

otello2005-06-03

ザ・インタープリター THE INTERPRETER

ポイント ★★★*
DATE 05/6/1
THEATER 池袋ヒューマックス
監督 シドニー・ポラック
ナンバー 66
出演 ニコール・キッドマン/ショーン・ペン/キャサリン・キーナー/アール・キャメロン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


大統領の暗殺という陰謀とそれを知ったヒロインの計画。謎解きのおもしろさとスリリングな展開で欠けたパズルを埋めていく知的興奮を味わいながら手に汗を握る。語り口は滑らかで饒舌。一つ間違えればご都合主義的な落とし穴にはまるところを、シークレットサービスの男を第三者的に配置し見るものの混乱をかろうじて防いでいる。ただ、陰謀に荷担する側も巻き込まれる側も登場人物が多くてポジションを整理するのが疲れる。


国連本会議場でマトボ共和国大統領の暗殺計画を偶然聞いた通訳のシルヴィア。彼女は警備担当に通報、シークレットサービスのケラーが警護にあたる。シルヴィアは暗殺者たちに追われるが、一方でケラーはシルヴィアの過去を暴いていくうちにシルヴィアも暗殺計画に一枚かんでいるのではないかと疑い始める。


ミステリーも、ただ単純に陰謀を暴いていくというだけではイマドキの目の肥えた観客には通用しないと思ったのか、とても凝った脚本に仕上がっている。大統領暗殺計画という陰謀自体が仕組まれたヤラセで、さらに大統領に家族を殺されたヒロインがその計画に便乗して復讐を果たそうとする。陰謀に関係したすべての人間が、だまし合って相手を出し抜こうとする。その過程がスリリングでエキサイティングなのだが、それにしても構成が複雑すぎるのではないだろうか。


綿密に練られたプロットは破綻もなく確かによくできている。それでもやはりこの情報量の多さではキャラクターをじっくり観察できない。もちろんきちんと伏線は張ってありつじつまは合っている。たとえばどの時点でシルヴィアが陰謀に便乗しようと決心したのかという点だけでもはっきりさせてくれていれば、すんなりと映画についていけたのに。大きな謎が二つもあると少し疲れてしまう。


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