こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ホステージ

otello2005-06-13

ホステージ HOSTAGE

ポイント ★*
DATE 05/6/8
THEATER 丸の内ルーブル
監督 フローラン・エミリオ・シリ
ナンバー 69
出演 ブルース・ウィリス/ケビン・ポラック/ジミーベネット/
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


「ダイハード」は子役に任せ、自分は真下正義になろうとしたブルース・ウィリス。それなのにあくまでアクション俳優にこだわろうとするあまり、映画全体を壊してしまっている。もっと構成は単純にしてディテールを描きこむべきなのに、事件の裏の裏をいくようなストーリーにしてしまったため破綻が生じている。それを補うスピード感もない。結局どっちつかずの中途半端な展開になってしまい、自らの低迷を象徴してしまった。


田舎町の警察署長・タリーの管轄内で、若者が犯罪組織の一員と家族を人質にとって篭城する。元交渉人のタリーは早速現場に駆けつけるがそこは要塞を思わせるセキュリティの豪邸。一方で犯罪組織は豪邸内にあるDVDを警察にも犯人にも気づかれないように手に入れるため、タリーの家族を人質にとってタリーにDVDを手に入れるように命じる。


今までの犯罪映画の要素を詰め込みすぎて交通整理ができていないのが失敗の原因だ。逆上した犯人との粘り強い交渉だったり、逃げ出した人質が電話で外部と情報交換しながら犯人を出し抜いたり。そのあたりまででやめておけばいいものを、さらにFBIを偽装できるほどの巨大な犯罪組織が警察署長を脅して機密情報を手に入れようとするのだ。その組織のやり方が荒っぽくて杜撰極まりない。また、家族の命と引き換えに犯罪組織に手を貸すタリーの苦悩も描かれておらず、彼が機転を利かせてピンチをチャンスに変えていくような発想もない。篭城犯の若者同様、何の計画性もなく物語は進行していく。


後半でヤケになった篭城犯が屋敷に放火する。タリーその混乱に生じて人質を救ってDVDも手に入れるのだが、大体あれほどの豪邸ならばスプリンクラーが設置されているはずだ。そしてクライマックスのDVDと人質交換シーンでもタリーの交渉人としての腕前が生かされているとはいえず、拳銃ですべてカタを付けてしまうのだ。相手方は数人、しかも殺しのプロのはず。それが夜店の射的の標的よりも簡単に倒れてしまうとは・・・。この映画で光っていたのはブルース・ウィリスの頭だけだった。


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