こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ダニー・ザ・ドッグ

otello2005-07-01

ダニー・ザ・ドッグ DANNY THE DOG


ポイント ★★*
DATE 05/6/20
THEATER 丸の内プラゼール
監督 ルイ・レテリエ
ナンバー 78
出演 ジェット・リー/モーガン・フリーマン/ボブ・ホスキンス/ケリー・コンドン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


なぜブルース・リーに匹敵するほどの抜群の身体能力とカンフーの腕前を持つのに、ジェット・リーはワイヤーアクションを用いるのだろうか。映画的アクションではない本物のスピードと拳脚のキレこそが武術を極めたジェット・リーの魅力のはず。ハリウッドスターのように特殊効果に頼らなくとも目を見張るような技を繰り出すところが彼の本領なのに、あまりにもマンガチックになってしまった格闘シーンには鼻白む。


首輪をはめられている時は思考を停止させているかのようにおとなしく、首輪をはずした瞬間「殺せ」という命令の元に戦闘マシーンと化すダニー。ギャングのボスの「飼い犬」として育てられ、用心棒をしているうちにデスマッチに出場する。そんな時盲目のピアノ調律師と出会い、彼の優しさに心を開いていく。ボスの元を脱走したダニーは調律師と暮らすうちに人間らしさを取り戻すが再びボスに連れ戻される。


もう40歳を過ぎているのにまだ少年のような表情を見せるダニー。戦うこと以外は禁じられ、知識は幼児並しか持たないからだろう。ボスが何度も言うように「小さい頃からの躾」のおかげだろうが、ジェット・リーの童顔が生かされている。そんな中でもふと見せる寂しげな表情は存在感抜群のモーガン・フリーマンをも圧倒する。


心を閉ざしたダニーは青系統の世界で描かれ、戦っているときと他人に愛されているダニーの世界はカラーを持つというルイ・レテリエの演出はわかりやすい。格闘シーンもビデオゲームを見ているようにアングルが頻繁に変わり臨場感は抜群だ。しかし、それらの映像はどこか作り物の臭いが強く、人間の感情的なものがとても弱い。ダニーの心のスイッチの切り替えも調律師父娘のダニーに注ぐ愛もどこか不自然なのだ。やはりダニーが犬として育てられた過程が抜けているからだろう。ボスがダニーをどうやって躾たか。ここがわからないとダニーに対して感情移入できないではないか。愛を知る課程も大切だが、愛を知らずに育った過程を描いてこそ生きてくる。


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