こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

宇宙戦争

otello2005-07-04

宇宙戦争 WAR OF THE WORLDS

ポイント ★★★*
DATE 05/6/29
THEATER チネチッタ
監督 スティーブン・スピルバーグ
ナンバー 79
出演 トム・クルーズ/ジャスティン・チャットウィン/ダコタ・ファニング/ティム・ロビンス
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


文明批判や反戦などという偽善めいたメッセージ性を一切廃しているところが物語を引き締める。ひとりの普通の男が体験する人智を超越したパワーを持つ未知の物体からの攻撃。彼が怯え、逃げ惑い、親としての自覚を取り戻すまでの過程を息もつかせぬテンポで描ききる。カメラは事件を俯瞰することなく徹底して主人公の目で対象を追う。主人公が見たものしか観客には見えない。その臨場感が圧倒的なリアリティを伴って見るものの五感を刺激し、恐怖となって増殖する。


街に電磁波嵐が吹き荒れ稲妻が落ちる。やがて地中からトライポッドと呼ばれる巨大な3本足ロボットが出現、エネルギー波で街を破壊し人々を虐殺する。命からがら現場から逃げ出した港湾労働者のレイは息子と娘と共に元妻の待つボストンを目指す。その途中、世界各地でトライポッドが人類を制圧していることを知る。


舞台は現代だが、冒頭で電磁波で電子機器を無力化することでテクノロジー的に原作や'53年の映画版に近いものとしているところがより人間が主人公であることを強調する。地面が割れトライポッドが出現し街を破壊するシーンなど、全貌をなかなか見せないところが「ジョーズ」を思い出させ、その後のノンストップアクションは「レイダース」のテイスト。若き日のスピルバーグの演出テクニックが思う存分堪能できることもこの作品の楽しみを加速させている。


ただ、エイリアンがバクテリアによって滅ぼされるというなんのひねりもない結末は興醒めだ。。これではドラマの舞台を現代に設定した意味がないではないか。せめてエイリアンがトライポッドを地球に埋めたときにはなかったオゾンホールのせいで紫外線にやられたとか、大気中の二酸化炭素量の予想外の増大に対応できなかったというような今日的な話題を盛り込むべきだろう。人間の本性は変わらなくとも、人間を取り巻く環境は変わっているのだから。


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