こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

フライ、ダディ、フライ

otello2005-07-13

フライ、ダディ、フライ

ポイント ★★*
DATE 05/7/9
THEATER 109シネマズ木場
監督 成島出
ナンバー 83
出演 岡田准一/堤真一/須藤元気/星井七瀬
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


真っ青な空に浮かぶ白い雲。夏を象徴するイメージが喚起させるのは青春の熱い思い。主人公はけんかに勝つために夏休みの40数日間体を鍛え、技を磨く。本来は高校生の青春ドラマなのだが、ここでは17歳の娘を持つ中年男が主人公。なまった体にムチをうち、足を引きずり筋肉痛に耐える姿が痛々しい。それは父親としての義務、男としての誇りを取り戻すための戦いということはよくわかるのだが、主人公にも彼を鍛える高校生にも肝心の動機が不十分。元々マンガチックな展開であるとわかっていても、物語は足が地につかないような浮ついた感じになっている。


家族を愛するサラリーマン・鈴木の娘が不良高校生に殴られ大怪我をする。鈴木は仕返しに行くが学校を間違えた上に返り討ちにあう。しかし、その高校で武術の達人・スンシンに出会い、夏休みの間格闘技の指導を受けることになる。鈴木は会社に休暇届を出し、スンシンの元でトレーニングに励む。


スンシンがどうして鈴木を助けようとしたのかよくわからない。友人たちの金儲けに素直に従うはずもなく、鈴木に亡き父親の姿を見出したわけでもないし、鈴木が熱心に弟子入りを志願したわけでもない。そのあたりの動機が物語の重要なポイントになるはずなのに、省略するのは手落ちではないか。掛け金集めに奔走する高校生や走る鈴木を応援するバスの乗客などどうでもいいシーンは編集して、鈴木とスンシンのふたりの間に流れる感情をもっと表現すべきだった。


鈴木を演じた堤真一が腰抜けのオッサンに見えないところが最大の失敗。前半のおどおどした雰囲気も表層だけの演技で、肉体からは中年男のゆるんだ雰囲気が感じられないのだ。やはり最初はおなか周りをもう少しだぶつかせるとかアゴに贅肉を付けるとかした上で、スンシンの厳しいトレーニングによってそれがそぎ落とされるというような展開にしないと説得力がない。二杯目俳優のイメージを壊したくないのはわかるが、4〜5キロの贅肉など5日もあればつくはず。それぐらいの役作りはしてほしかった。


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