こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

Dear フランキー

otello2005-07-18

Dear フランキー


ポイント ★★★*
DATE 05/7/13
THEATER シネカノン有楽町
監督 ショーナ・オーバック
ナンバー 85
出演 ジェラルド・バトラー/エミリーモーティマー/ジャック・マケルホーン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


家族という人間関係を維持していくためには幸せ芝居を続けていかなければならない。秘密と嘘、気付いていても気付かないフリをし、気付かれているとわかっていても芝居を続ける。子を思う母と母を思う子。お互いの気持ちがわかっているからこそ相手を傷つけたくないと思う。薄幸の母子と見知らぬ男の幸せになりたいと願う気持ち。荒涼とした背景から人の温もりがスクリーンからあふれ出す。


小さな港町に引っ越してきたリジーとフランキー母子。難聴のフランキーは船乗りの父から送られてくる手紙が唯一の楽しみだが、その手紙はリジーが書いているものだった。ある日、父が乗っていることになっている貨物船が本当にリジーたちが住む町に寄港することになり、リジーは慌ててフランキーの父親役を務める男を捜す。


本当の父親がどんな男か知らず船乗りの父の存在を信じているフランキー、フランキーからの手紙でしか彼の気持ちを知ることができないリジー。いつかはそんな関係が破綻することがわかっていながらも結末を先延ばしにするしかない悲しさ。そんなときに現れた父親役の男はどんな気持ちだったのだろう。過去を一切語らないこの男もまた息子を持っていたのだろか。フランキーに対する態度から彼が息子を失った父親だったことは間違いない。水切りを教え、女の子の誘い方を教え、眠ったフランキーをベッドまで運ぶ。過去を語らない男を演じたジェラルド・バトラーがぶっきらぼうな態度と背中で父親としての圧倒的な存在感を示す。


日差しは弱く海は濃い北の寂れた街。フィルムはブルーを基調とした風景を切り取り、最後まで寒々とした雰囲気を崩さない。しかしそこで繰り広げられるドラマは徐々に温かさを増す。最初はしゃべらなかったフランキーが、男と別れるときに勇気を出して自分の思いを声にする。人に愛されていることを実感して初めて勇気を持つ事ができる。だからこそフランキーは母と自分との間の幸せ芝居に終止符を打ち、新たな関係に踏み出す決心をしたのだろう。


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