こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アイランド

otello2005-07-27

アイランド THE ISLAND

ポイント ★★*
DATE 05/7/23
THEATER 109シネマズ木場
監督 マイケル・ベイ
ナンバー 90
出演 ユアン・マクレガー/スカーレット・ヨハンソン/ジャイモン・フンスー/ショーン・ビーン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


クローンにも「ロボット三原則」のようなものが必要になってくるのかもしれない。「人間を傷つけてはならない」「人間の命令に従わなければならない」そして「コピー元の人間に会ってはならない」。いくら知性や感情があるといっても所詮は人工物だ。コミュニケーションが成り立つからといって、決して情けをかけてはいけない。いかなる事情があるとはいえ、最優先されるのは人命のはず。さもなければこの映画のような悲劇が待ち受けている。


近未来、地上は汚染され生き残った人間は管理された建物の中で暮らし、アイランドという楽園行きの日を待っている。そんな中、リンカーンは自分たちの世界に疑問を持つ。仲間たちが殺されているところを目撃した彼は、友人のジョーダンと脱走を図る。外の世界は汚染などされておらず、彼らの知る地上とはまったく違っていた。


前半部、クローンたちがクリーンな環境で生活している様子が描かれる。無菌室で育てられる家畜のように栄養状態から精神状態まで管理され、出荷される日を待っているのだ。すべてはクローン元の人間に健康な臓器を提供するために。ある程度の知的活動をさせないと健全なクローンは育たないという実験結果が、彼らにリアルな感情を持たせていて恐ろしい。ただ、DNAのレベルから複製しているのにコピー元の記憶が残っているとういうのはやはりしらける。


一転して後半は脱走したリンカーンとジョーダン、彼らを追跡する傭兵隊の壮絶なアクション。しかしここでも、「殺されたくない」と逃げた2人のクローンが人間を殺しまくるという矛盾。しかも、外界を知らないはずの2人がなぜか短期間に膨大な知識を身につける。そのあたりはノンストップアクションで考える余裕を与えない。造型からエンジン音まで「スター・ウォーズ」の空中バイクに似た乗り物をユアン・マクレガーが乗りこなすのは愛嬌としても、もう少しディテールを詰めなければ、「クローンに人権はあるのか」というせっかくの問題定義を薄っぺらなものにしてしまう。


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