こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

チームアメリカ

otello2005-08-01

チームアメリカ・ワールドポリス TEAM AMERICA WORLD POLICE


ポイント ★★
DATE 05/6/24
THEATER UIP
監督
ナンバー 76
出演
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


「世界の警察」を気取って国際紛争を解決しているつもりの米国とその軍隊を痛烈に皮肉っている、つもりなのだろう。テロリスト退治のためなら文化的遺産を破壊することもためらわず、世界平和のためといえばどんな横暴も許されると思っている。そんな正義の味方を気取るアメリカ人の驕りをチーム・アメリカという武装組織に象徴させ徹底的に茶化している。しかし、そこには洗練された風刺というものはまったくなく、単なる悪趣味の羅列。ジョークというよりもお下劣の世界でしかない。


パリでアラブ系テロリストと戦い隊員をひとり失ったチームアメリカは、ブロードウェイ俳優ゲーリーをリクルートする。彼の演技力は潜入捜査で大いに生かされ手柄を連発、やがて同僚のリサとも結ばれる。そんな時、北朝鮮キム・ジョンイルが新型爆弾で世界を破滅させる計画を進行中という情報を受け、チームアメリカは討伐に向かう。


全編、マリオネットで描かれるこの作品、人形たちの表情が非常に豊かで物語が進行していくうちに人形であることを忘れてしまうほどの精巧なできばえだ。特に目の演技はそれだけで登場人物の心理状態を明確に定義する。そういう意味では感情表現がわかりやすく非常に明確なテーマを持った作品である。ブッシュ政権をこき下ろすだけではなく、ハリウッドスターたちの平和行動はキム・ジョンイルの陰謀に手を貸すだけと揶揄する。ここでもセレブたちの自己満足へのしっぺ返しというよりも、笑えないギャグの連発で気分がなえる。


過ぎたるはなお及ばざるが如し。権力を批判し偽善を笑い飛ばす。その意気はよい。それでも自分たちが批判する対象に対してもっと愛情を注がなければ、批判精神も見るものに伝わるまい。ただひとつ「パールハーバー」の歌だけはすごく共感できたが、それも繰り返されるとしらけてしまう。せっかくタイムリーな題材と熟練した表現技術があっただけに、あまりにも下品に落ちてしまったことが残念だ。


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