こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

サヨナラCOLOR

otello2005-08-22

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ポイント ★★
DATE 05/8/17
THEATER ユーロスペース
監督 竹中直人
ナンバー 99
出演 原田知世/段田安則/雅子/中島唱子
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


中年の男が高校時代のほろ苦くも甘い記憶にノスタルジーを覚えるというありふれた構成の上、現在も過去もぬる〜いエピソードの積み重ね。山場に乏しく感情的にも盛り上がりに欠ける上、そこから枯れた味わいのようなものも漂ってこない。若かりし時代はとうに過ぎ、病魔に体を蝕まれたものだけが持つような人生に対する達観も感じられない。コメディなのにしみじみとした味わいのある作品を作ろうという狙いは理解できるが、無駄の多い脚本のせいで的を外している。


医師・佐々木のもとに子宮ガン患者・未知子が入院してくる。未知子は佐々木が高校時代に熱い想いを寄せていたが、未知子は佐々木のことを思い出せない。佐々木が思い出話をしているうちに未知子の記憶がよみがえる一方で、未知子の身の回りに変化が起きる。


好きで好きでたまらない衝動、大人になった今では考えられないようなアホなことをわき目も振らずやってしまう恥ずかしさ。そういったものをまじめに描いてこそユーモラスな空気が漂ってくるのだが、この作品には青春のエネルギーを爆発させるようなパワーがない。その熱さが気力体力も衰えた中年となった現在とのコントラストとなるのだが、そこまで強烈な印象も残さない。しかも、過去も現在も叶わぬ佐々木の恋心に未知子が気持ちを許していくというプロセスも予定調和的。佐々木を物語の中心にすえればいいものを、未知子の同居人の浮気の話など細かく描いてしまったのは致命的な失敗だ。


高校時代、恋、難病。結局、竹中直人も自分なりの「セカチュー」を作ってみたかったというだけなのだろう。こちらは自分が死ぬのだが。主人公の佐々木を彼が熱演することでリアリティが薄れ、安っぽいコメディもどきになってしまうこと竹中は気づくべきだった。劇中、未知子が作るようなランプのはかなくも美しさを強く主張するようなきらめきは、この映画からは感じられなかった。


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