こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ふたりの5つの分かれ路・・男の未練

otello2005-08-26

ふたりの5つの分かれ路 5X2

ポイント ★★★
DATE 05/8/22
THEATER シャンテ・シネ
監督 フランソワ・オゾン
ナンバー 102
出演 ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ/ステファン・フレイス/ジュラルディン・ペラス/フランソワーズ・ファビアン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


離婚届にサインをしたあと、最後に1回セックスをしようとする男と拒絶する女。「やり直せないか」という男の言葉を置き去りにして女はドアを閉める。男女関係の終わりをリアルにみせることで物語は時間をさかのぼり、男と女の恋愛や結婚に対する違いを際立たせる。どうして男はいつまでも未練がましいのだろう。どうして女は愛の思い出をこんなにも簡単に捨てられるのだろう。人間関係において、過去を重視する男と未来を重視する女の永遠に交わらない平行線を冷徹なタッチでフィルムに焼き付ける。


マリオンとジルは離婚に合意する。その後最後にベッドを共にするが、ジルの脳裏をよぎるのはマリオンとの結婚生活の中で徐々にすれ違いを見せてきた4つの出来事だった。ゲイの兄とのディナー、マリオンの出産、結婚式の夜の出来事、そしてふたりの恋愛の始まり。記憶を時間を逆行するうちに気まずい思い出が美しい輝きを取り戻す。


夫婦の心のすき間にしのび込む冷たい風。ほんのちょっとしたことなのにそれが蓄積すると亀裂となり、最後にはダムが決壊するようにほころびる。ちょっとした行為やひと言がわだかまりとなり、澱となる。そして、そのときにほんの少し相手のことを思いやっていれば修復できたと後悔する。ここで描かれるのは男のほうの失敗ばかりだ。


たとえば結婚式の夜に酔いつぶれて妻をほったらかしにする。出産に間に合わなかったばかりか、妻の両親の顔を見たとたんに逃げ出す。兄の同性愛恋人の悪口を言う。夫婦間で秘密を持たず思ったことを口にするのはいいのだが、相手が傷つくことに気付かない。結婚する前は長所に思えたことが、一緒に暮らし始めると鼻につく。オゾン監督は物語を現在から過去にさかのぼることで、まだ始まったばかりの恋をラストシーンに持ってくる。この恋の結末はわかっている。それでも、出合ったばかりのころの輝かしい未来を信じていた頃のふたりすがたを最後に見せてくれたのが救いだった。


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