こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

Be Cool

otello2005-09-07

Be Cool

ポイント ★★
DATE 05/9/3
THEATER 平和島シネマサンシャイン
監督 F・ゲイリー・グレイ
ナンバー 108
出演 ジョン・トラボルタ/ユマ・サーマン/ハーベイ・カイテル/ザ・ロック
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


あくまでもライトなコメディ感覚の映像なのに、登場するギャングはやたら銃をぶっ放す。罪悪感やためらいなど微塵もなく、蚊を叩くような感覚で人殺しが行われる。かといって血なまぐさい物語でもない。ここで扱われている命の軽さはいったい何なのだろう。米国社会の銃の氾濫や非米国民の人命軽視を風刺しているわけでもない。音楽業界に巣食うギャングたちの勢力争いを、知的ゲームに見せようとしているが、決して成功しているとはいいがたい。


映画業界から足を洗おうとしているチリは、友人が殺されたことから音楽業界に進出。有望な新人を見つけ、強引にエージェントから引き離したため命を狙われる。一方で友人殺しの犯人の顔を見たため、ロシアマフィアにも追われ、さらに莫大な借金の肩代わりをして黒人グループからも脅迫を受ける。チリは頭脳をフル回転して、苦境を脱出する方策を練る。


本来ならばトラボルタ扮するチリが綿密に計画を練って相手を出し抜いたり、情報操作で追うもの同士を相打ちにしたりする過程を楽しむ映画なのだろう。しかし、チリの打つ手はことごとく場当たり的。頭をフル回転させ体を張って危機を切り抜けるというより、ただ、流れに身を任せているだけにしか見えない。巨漢のボディーガードに襲われたときにオーディションがあるといってしのぐシーンなど最たるものだ。さらに、ラストのミュージックビデオの授賞式で、ギャングの子分のゴロツキどもが司会をしたり舞台で踊ったりするシーンにも違和感を禁じえない。


作品全体に流れるゆる〜い空気とあいまってトラボルタの演技も終始する。どんなときにも表情を変えないクールな男を演じているのはわかるのだが、その表情の下に感情の揺れがまったく感じられない。「パルプ・フィクション」を彷彿させるダンスシーンもあるのだが、体のキレはもはやない。ただ、ザ・ロックが見事に無駄な筋肉をそぎ落としてパワフルなダンスを披露したのだけには驚かされた。


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