こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

南極日誌

otello2005-09-12

南極日誌

ポイント ★★
DATE 05/9/7
THEATER シネカノン有楽町
監督 イム・ピルソン
ナンバー 110
出演 ソン・ガンホ/ユ・ジテ/パク・ヒスン/キム・ギョンイク
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


どこまでも続く雪原、沈むことのない太陽、凍てつく空気。そんな厳しい環境の中で徐々に狂っていく理性。病原菌に冒されるように南極の自然は探検隊員の心を蝕んでいく。しかし、それが亡霊によるものなのか極限状態に追い詰められた人間の心理が見る幻覚なのか境界があいまいで、恐怖の根源がどこにあるのかわからないために怖さよりもイライラだけが募る。結果としてせっかくの素材を生かしきれていない生ぬるい作品になってしまった。


6人の韓国人探検隊が南極の「到達不能点」を目指す。太陽が沈まない夏の南極で重いそりを引きひたすら歩きつづける探検隊はある日、80年前に遭難したイギリス探検隊が残した日誌を発見する。そこに記録されていたのは彼らが死に至る克明な記録だった。その日から韓国隊にも不吉な予兆が現れる。


ほとんどのシーンで俳優たちがゴーグルをつけ防寒服のフードをかぶっているために登場人物の表情が読みづらい。酷寒の中では表情も凍ってしまうのかも知れないが、それでも目で感情を表現することぐらいできたはず。精神がほころんでいく過程でシンボルとなるような小道具があればもう少しわかりやすかったのだが、そういう工夫もない。また、せっかくイギリス隊が残した日誌があるのにそれとの関わりがイマイチ見えてこない。一番若い隊員が日誌を預かりパラパラと目を通すのだが、なぜ彼はそこから何も感じ取らないのだろう。南極の天候など今も昔もそう変わるわけはないのだから、日誌を詳細に検討すれば何らかのヒントは得られるはず。どうして彼らの失敗から学ぼうとしないのだろうか。


やはり、イギリス隊が残した日誌の呪いが韓国隊を死地に追いやったということだろうか。日誌に時々描かれているイラストと同じような光景が再現され、ひとりまたひとり隊員は命を落としていく。だが、それならばやはり日誌の内容を子細に分析する必要があったはず。イギリス隊が壊滅していく過程が80年後の韓国隊に再現されていく。そこに南極の魔物のようなものを感じさせてくれなければ、物語としてあまりにも投げやりではないだろうか。


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