こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

サマータイムマシン・ブルース

otello2005-09-19

サマータイムマシン・ブルース

ポイント ★★★★
DATE 05/9/16
THEATER アミューズCQN
監督 本広克行
ナンバー 114
出演 瑛太/上野樹里/与座嘉秋/川岡大次郎
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


過去に行くことなど絶対に不可能であることは明白。だから、タイムマシンものを作るなら細かいツッコミを入れるのはヤボと思えるようにコメディにしようという割りきりが潔い。過去をいじったら現在に矛盾が生じる。ならばその矛盾で笑いを取ろうという姿勢と、ツボを突くセリフや思わず噴き出すオチをちりばめ、見るものを飽きさせない。またロケ地の風景は美しく、俳優たちも若々しい。アホことを真剣にやれる大学生の言動も、肩の力が抜けていてよくまとまっている。


とある大学のSF研究会部室に突如タイムマシンが現れる。部員のひとりが、リモコンが故障して使えなくなったクーラーを動かすために昨日にタイムトリップして故障する前のリモコンを持ち帰ろうと提案、早速実行に移す。しかし、過去を変えると現在が破綻するという法則に気づき、必死になっていじった過去を修復する。


冒頭の草野球から銭湯、そして部室と気にするほどのことではないけれど少し不思議なことが起きる。退屈な学生の何気ない日常にさざ波を立て、その違和感を後で解明していくという手順が軽快。変えてしまった昨日を必死になって元通りにしようとする今日の学生たちと、何も知らない昨日の学生たち。昨日の自分たちに見つからないように行動するタイムスリップしてきた学生たちのドタバタぶりは、抑えどころと引きどころをきちんとわきまえていて心地よい笑いを誘う。


タイムマシンという世界を変える力を持つ機械を手に入れたのに、歴史を変えてやろうとか死んだ恋人の命を救おうとかいった大仰な願望を持たないところが好感度大。うだるような暑さを何とかしたい、ただそれだけ。そこになくなったシャンプーやカッパ地蔵、母子の出会いなどのディテールも絡める。いちいちしょーもないエピソードなのだがそのばかばかしさにまた腹をくすぐられる。ボケとツッコミ、そしてフリとオチが軽妙だが計算されつくした名人芸のような風格を見せてくれた。


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