こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

四月の雪

otello2005-09-21

四月の雪


ポイント ★*
DATE 05/9/9
THEATER UIP
監督 ホ・ジノ
ナンバー 111
出演 ペ・ヨンジュン/ソン・イェジン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


お互い配偶者がいる身の上で旅行に出かけたカップルが自動車事故に遭い、意識不明の重傷を負う。残された互いの夫と妻はやがて2人の関係を知る。料理の仕方次第では上質のサスペンスになりうる題材なのに、なぜか残された男女の恋愛物語にすりかわってしまい、煮え切らない心理描写に終始する。そこには信じていたものに裏切られた虚無感もなく、新たに芽生えた愛への希望もない。俳優のアップを多用したダラダラと間延びした映像の連続だ。


妻が交通事故で重体に陥ったという連絡を受けたインスは、妻が不倫旅行中だったと知る。相手はソヨンという美しい女性の夫。看病を続けるうちにインスとソヨンは接近し、お互いの配偶者同士が惹かれあったようにふたりも結ばれる。やがてインスの妻は快方に向かうがソヨンの夫の容態は悪化する。


思いがけず知ってしまった妻の嘘、夫の秘密。残された者たちは傷つく以上に途方にくれ、少しでも心を強く持とうと寄り添う。ひとりの知人もいない土地での看病生活ではお互いだけが頼りで、同じ立場にあれば惹かれあうのも当然だろう。それでも、不義密通をはたらいた配偶者に対する怒りや絶望よりも、自分たちも彼らと同じ道に落ちのうのうとしている神経の太さ。このふたりの愛は、単に心にあいた穴を埋めるために肉体を貪りあっているに過ぎない。なんという浅はかな愛だろうか。


結局、ソヨンの夫は意識を回復することなく死に、インスの妻は後遺症もなく無事退院する。インスは何事もなかったように日常生活に戻っていく。そして季節はずれの大雪に見舞われた夜、再びインスとドライブに出かける。しかし、それもふたりの愛を成就するための逃避行なのか、自分たちの配偶者と同じ轍を踏んでいるだけなのか、どのようにも取れるあいまいな表現でお茶を濁す。もう少し小道具などの映画的なテクニックを効果的に使わないと、いくら笑わないヨン様といってもすぐにそっぽを向けられるだろう。


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