シンデレラマン CINDERELLA MAN
ポイント ★★*
DATE 05/6/14
THEATER 丸の内ピカデリー
監督 ロン・ハワード
ナンバー 71
出演 ラッセル・クロウ/レニー・ゼルウィガー/ポール・ジアマッティ/クレイグ・ビアーコ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
ライセンスを剥奪され試合から遠ざかっていても、いつしかリングに復活することを夢見て密かにトレーニングを積んでいたのならわかる。肉体労働で体はなまっていなかったとはいえ、何ヶ月もまったくボクシングのトレーニングをしていないボクサーがいきなりランキング上位選手と戦って勝てるはずはない。しかも試合当日に何も食べていない。あまりにも現実離れした設定に一気に冷めてしまった。
ボクサーとしてキャリアの絶頂にあったジム・ブラドックは手の骨折で落ち目になり、ついにはボクサーのライセンスを剥奪される。おりしも大恐慌の最中、ジムは日雇い仕事で家族の糊口をしのいでいたが、ある日マネージャーのジョーから復帰戦の話を持ちかけられる。ジムはその試合に勝った後は連戦連勝、ついに世界チャンピオンに挑戦することが決まる。
カネに困ったボクサーが肉体労働に従事しながら家族を養い、リングで戦う様はまるで「ロッキー」シリーズを見ているようだ。しかし、ジムの妻・ミアは世界戦を前にエイドリアンのように「勝って」とは言わず「試合をやめて」という。格闘家との妻としてのなんと言う自覚のなさだろう。家族愛を強調したいのはわかるのだが、もはや当事者はみな鬼籍に入っているのだから、事実に基づいた創作ということでいくらでも脚色できたはず。練習しないでもランカーに勝てる実力があるのだから、妻は夫を信じて「家族のために絶対勝って」というべきだろう。
強調されすぎた家族愛もちぐはぐなら、ボクシングシーンもぎこちない。作り物に徹するのならもう少しハデな演出にすべきだし、リアリティを出したいのならあんな大振りなパンチは絶対に出さない。いくら70年前のボクサーでももっと攻守ともに洗練されているはず。これでは素人の殴り合いのレベルでとても世界戦とはいえない。あらゆる点でノリの悪い「ロッキー」を見ているようだった。