こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ルパン 

otello2005-10-11

ルパン ARSENE LUPIN


ポイント ★★
DATE 05/10/8
THEATER ワーナーマイカル新百合ヶ丘
監督 ジャン・ポール・サロメ
ナンバー 125
出演 ロマン・デュリス/クリスティン・スコット・トーマス/パスカル・グレゴリー/エバ・グリーン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


物語は次々に意外な展開を見せ、驚きの連続だ。しかし、そこには一貫性がなく場当たり的。登場人物の行動意図がまったく不明で、何ゆえ盗むのか、何ゆえ陰謀を練るのかがまったくわからない。単純に財宝のありかを示す十字架争奪戦にすればよいものを、不老不死の女や彼女に付きまとう謎の男などを登場させているが、ルパンの魅力を引き出すどころか彼らの存在が物語の進行を妨げている。もっとルパンの「盗み」に対する哲学や美学を見せてほしかった。


19世紀末、ルパンは盗賊である父が首飾りを盗んだ末に殺されたことから公爵家を追い出される。その後泥棒となったルパンはパーティに出没しては宝石を盗んでいたが、ある日ジョセフィーヌという美しい女に心を奪われる。そして、財宝のありかを示す3本の十字架を盗む計画を立てるが、王政復古を企む一味に邪魔をされる。


ジョセフィーヌにまとわりつき、時にルパンの命を狙うボーマニャンという男の存在意図がまったく不明だ。彼はジョセフィーヌの虜になっていてルパンに嫉妬しているのは理解できる。一方では財宝争奪戦におけるルパンのライバルでもあるのだから、ルパンの命を狙うのも納得できる。しかし、ボーマニャンの正体が十数年前に死んだことになっていたルパンの実の父親というのはあまりにもばかげている。ボーマニャンはルパンが自分の子であると知りながら銃やナイフを向け、彼が実の父であると知ったルパンもたいしたショックも受けずに闘う。ルパンはずっと父親の死の真実を探していたのではないか。ならばその父に殺されかけていたことになんらか特別な反応を示すはずだろう。


結局、ジョセフィーヌという魔性の女に親子3代にわたって魂を抜かれ、いいように道具として使われるというのがルパン家の血筋ということを言いたかったのだろう。何度裏切られても「フ〜ジコちゃん」と一途な愛を捧げるルパン3世のルーツを見たような気がした。


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