こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ALWAYS 三丁目の夕日

otello2005-11-11

ALWAYS 三丁目の夕日

ポイント ★★★*
DATE 05/11/6
THEATER 109シネマズ港北
監督 山崎貴
ナンバー 139
出演 吉岡秀隆/堤真一/小雪/薬師丸ひろ子
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


幅の広い道路をガタゴト走る路面電車、背の低いビルの木製の窓枠、そしてまだ3分の1くらいの高さまでしか完成していない東京タワー。モノクロ写真でしか見たことがないような50年近く前の東京の風景を、セピア調に退色させてCGで再現させるという手の込んだ視覚効果がこの作品の性格を決定付けている。東京の街中にも人情が色濃く残り人々は助け合って生き、東京タワーという夢の象徴の間近に見ながら豊かな未来を信じている。VFXの最新技術でノスタルジーを真正面から描くという発想が見るものの涙腺を刺激する。


昭和33年、青森から東京の小さな自動車整備工場で住み込みで働く六子は受け入れ先で本物の家族に出会った気になる。向かいに住む文学青年の龍之介は身寄りのない小学生・淳之介をあずかることになるが、淳之介が自分の作品のファンだと知って心を開く。


自動車修理工場の人々を中心に作家と少年の心の交流を約1年間にわたって描いているのだが、エピソードは単発的でまとまりはない。もう少し中心となる人物、たとえば作家と少年の関係に絞り込むとか、六子と田舎の親の関係に絞るとかしないと、散漫な感じがぬぐいきれない。もちろん六子と淳之介のエピソードは「親と子」というキーワードではくくれるのだが、直接関係しているわけではなくただポッと投げ出しただけという感じ。これに妻子をなくした医師の話や飲み屋の女将の身の上話などを絡めるため、いやおうなしに話は拡散していく。このあたりもう少し編集して、上映時間を刈り込めばすっきりとしたに違いない。


それでも登場人物の衣類小物から商店の看板、木造の町並みの温かさ、オート三輪やフラフープと言った当時の風俗習慣が生き生きと描かれているために、スクリーンを見ているだけでまったく飽きない。さらに、子供たちの生き生きとした表情と等身大の大人たちがまさに「古きよき時代」を再現し、温かい気持ちにさせられる。


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