こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ロード・オブ・ドッグタウン 

otello2005-12-12

ロード・オブ・ドッグタウン LORDS OF DOGTOWN


ポイント ★★
DATE 05/9/26
THEATER ソニー
監督 キャサリン・ハードウィック
ナンバー 117
出演 ヴィクター・ラサック/ジョン・ロビンソン/エミール・ハーシュ/レベッカ・デモーネイ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


スケボーの裏に取り付けたカメラがとらえた地を這うようなアングルからスケーターに寄り添うような移動シーンまで、変幻自在の撮影技術はスピーディで臨場感たっぷり。オリジナリティにあふれ見るものにスケボーを疑似体験させようとするカメラワークは「ビッグ・ウェンズデー」を髣髴させるものがあった。しかし、肝心のストーリーのほうは青春と友情を謳歌する物語とはいいがたい。ただ短慮な若者が深い思索も蹉跌もなく若さを浪費しているだけにしか見えなかった。


'70年代、米西海岸にたむろするサーファー、トニー、ステーシー、ジェイの3人は、ある日ウレタン製の車輪をつけたスケボーを入手する。その日から水のないプールで練習を始め、様々な独創的なワザを開発し、一躍スターになっていく。やがてトニーとステイシーは他のチームに引き抜かれ、ジェイだけが地元に残る。


せっかくスケボーの黎明期を描いているのに、各エピソードのぬるさは何なのだろう。若者ならではの一途な情熱やアホな失敗談といった青春映画のお約束や、カリフォルニアの抜けるような青空の下の楽天主義といったものはこの作品にはあまりない。映画の冒頭、夜明け前に家を抜け出してサーフィンに向かうシーンで期待させただけに、その後は尻つぼみなのは残念。なぜもっと感情に訴えかけるような演出をしなかったのだろう。淡々と描いているというより、主要登場人物に対する理解や踏み込んだ解釈が希薄といったほうがよい。


仲がよかった仲間たちが有名になるにつれ袂を分かち、友情すら失ってしまう。しかし、友人のひとりが脳腫瘍摘出手術を受けて見舞いに行ったことから3人は再会、もう一度カラのプールで滑り始める。一見昔に戻ったようで、二度と戻れないことを知っている。だが、消えた友情を惜しむでもなく過ぎ去った時を懐かしむわけでもない。圧倒的なテンションとスピードを失った映像にはもはや見るものをひきつける魅力は残っていなかった。


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