こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ディック&ジェーン 復讐は最高!

otello2006-01-06

ディック&ジェーン 復讐は最高!


ポイント ★*
DATE 06/1/2
THEATER 109シネマズ港北
監督 ディーン・パリソット
ナンバー 1
出演 ジム・キャリー/ティア・レオーニ/アレック・ボールドウィン/リチャードジェンキンス
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


明るい未来を信じてまじめに働いてきたのに、一瞬にして人生が暗転する。その落下スピードの早さと、身の回りから次々とカネ目のものがなくなっていく寂しさ。このあたりをリアルに描いてこそ観客の共感を得られるのに、あくまでコメディタッチにこだわってしまったために、出来損ないの笑いを腹に溜め込むような消化不良を起こしてしまった。まるでパーティドレスで盆踊りに参加するようなストーリーとは見当違いの演出法が、出演者の持ち味を殺している。


巨大IT企業の広報担当・ディックはテレビ番組に出演中に自社の経営破たんを知る。社長は社員に全責任を押し付けてトンヅラ、残った社員は全員解雇された上に年金すらもらえない。やがてカネに困り始めたディックは妻のジェーンと共に強盗で生活費を稼ぐようになる。


会社の破綻が知れ渡っときの社員たちのあわてぶりから、ディックの面接、果てはよその芝生を勝手に盗むというシーンからコンビニ強盗まで、演出の意図がまったく理解できない。おそらくジム・キャリーの過剰な演技で笑いを取ろうというのがその狙いなのだろうが、やたらドタバタしているだけで芸を見せるわけでもなくユーモアのかけらもない。この監督、笑いというものをまったく理解していないのではないだろうか。


また、いくら生活に困ったとはいえ強盗でカネを得るという行為は不快感しか覚えない。悪党からカネを奪うのならイザ知らず、ディックとジェーンが襲うのは善良な商店ばかり。しかも、盗んだカネで贅沢品を取り戻し、自宅にプールまで作る始末。ここに来てコメディとして空振りしているだけでなく、ドラマとしても失敗している。結局、社長を嵌めて年金だけは取り戻すことに成功するが、本来サスペンスとして盛り上げるべきクライマックスのシーンも緊張感に乏しくぬるいできばえ。この作品のディーン・パソリット監督はコメディの作り方をもっと勉強したほうがよい。


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