こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ホテル・ルワンダ

otello2006-01-16

ホテル・ルワンダ HOTEL RWANDA

ポイント ★★★★*
DATE 05/11/8
THEATER 映画美学校
監督 テリー・ジョージ
ナンバー 140
出演 ドン・チードル/ソフィー・オコネドー/ニック・ノルティ/ホアキン・フェニックス
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


ギリギリの選択を迫られたときにどういう行動をとるか。命を張って家族や自分より弱いものを助けようとするのか、自分だけ助かろうとするのか。人の上に立つべき立場の人間が命の危険をかえりみず、自分を頼る人間のために奔走する。もちろん内面では恐怖に苛まれていたのだろう。しかし、家族や部下の前では毅然とした姿に揺らぎはなく、リーダーとしての資質を示す。虐殺が横行する無法地帯で自分の命よりも大切な「善意」のために行動した主人公の姿は感動的だ。


ルワンダの首都キガリの一流ホテルで責任者を勤めるポールは多数派のフツ族ながら少数派のツチ族の妻と子供たちがいる。フツ族民兵が突然ツチ族大虐殺を始め、ポールは家族をホテルにかくまうが、ポールを頼って多くのツチ族がホテルに押し寄せる。ポールは彼らを保護するためにフツ族の有力者や国連軍の間を交渉してまわる。


扇動され暴走する民兵たちを相手に、武器を持たない一民間人がどこまでどこまで抵抗できるか。ジャーナリストが虐殺の現場を撮った映像を全世界に流したにもかかわらず、先進国からは見放されたルワンダで、ポールは世界中に電話を掛けさせ、自分も本社に援助を仰ぐ。国連軍に保護を断られても粘り強く交渉し、フツ族軍人には賄賂を渡して安全を確保し、ヤミ屋から食料を調達する。ほとんどの人間が足がすくんで何もできない中、ポールだけはひたすら行動する。彼は、人間は何をしたかで評価されるということを誰よりも良く知っているのだ。


突然隣人がナタをもって襲ってくる恐怖。そして部族間憎悪を植えつけておきながら、爆発しても見知らぬ顔をする欧米先進国の身勝手。映画はポールの視線を通しているため、虐殺は点でしか描かれない。それでも朝もやが晴れた川沿いの道を埋める無数の死体の映像は、悲劇の規模を物語る。100万人が犠牲になったという。ポールが救ったツチ族は1200人。ポールは最後まで逃げ出さなかった。そこに「よき人間」としてのプライドを強烈に感じた。

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