こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

グレート・ビギン

otello2006-01-26

グレート・ビギン GENESIS


ポイント ★★
DATE 05/5/27
THEATER 日仏エスパスイマージュ
監督 クロード・ニュザニー/マリー・プレンヌー
ナンバー 64
出演
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


そのタイトルどおり、無からの創世、そして現在の人間に至るまでの進化の道のりをアフリカ人の語り部の哲学問答を交えながらフィルムに収める。といってもビッグバンや銀河の誕生と成長、太陽系の生成などの宇宙の歴史は比喩的なイメージだし、太古の地球や原初の生命といった理論的な想像上の世界は溶岩や海水で置き換えられている。要するに語り部の言葉と映像のメタファーで観客の想像力に訴えることで、CGを使った再現映像にする愚を避けている。


やがて魚が陸に上がり、肺を持ち、さらに爬虫類、鳥類、哺乳類と遺伝子が洗練されていく。その様子はより原始的な生物から生存競争を経てより環境に適した形態を持つ種があまねく大地に広がっていく様子を描くことで表現する。性を持ち、子孫がサバイブする確率を高めるためにオス同士を争わせ、より強い遺伝子を次世代に残そうとする。さまざまな生物が繰り広げる生き残るための競争をカメラはじっくりと丹念にフィルムに焼き付けていく。


しかし、この作品で語られていることにはまったく新しさがない。普通に高校レベルの教育を受けている人間ならば知っている内容ばかり。宇宙の歴史・生命の進化などというあまりにも大きなスパンをわずか80分ほどのフィルムにまとめようと思えば当然ひとつひとつの現象に長く時間を割けない。結果的に対象を深く掘り下げることなく、文部科学省推薦「中学生のための自然科学入門」という体裁になってしまった。いや、むしろはじめからローティーン向けに作っているのだろう。


登場する動物・昆虫といった生き物の生態もBBCのドキュメンタリーで見たようなものばかりで、これといって「生命の神秘」を感じさせるほど心魅かれるものはなかった。教育映画として学校などで上映する分にはよいだろうが、商業映画としてはもう少し対象の範囲を絞らなければお金を払う価値はないだろう。


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