僕が9歳だったころ
ポイント ★★
DATE 05/12/7
THEATER メディアボックス
監督 ユン・イノ
ナンバー 151
出演 キム・ソク/イ・セヨン/チョン・シギョン/チ・デハン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
親友、転校生、こわ〜い先生、初恋、そして障害を持ちながらも強く生きる母、貧しくとも家族を愛する父。懐かしさとやさしさがいっぱい詰まった少年時代を描いているのに、あまり共感できない。子供たちの繊細な気持ちをあまりにも言葉にしているからだろう。本来なら感動的なシーンになるべきところを、いかにも「大人が考えたセリフを子役が暗記してしゃべっている」という不自然さが鼻につく。その結果、演じる子供たちに幼さがなくなり、9歳というよりは12歳ぐらいに見えてしまうのだ。
小学校3年のヨミンは親孝行なだけでなく、けんかも強く思いやりもあってクラスメートから信頼されている。ある日、「アメリカ帰り」を自称する女の子・ウリムが転向してきて、ヨミンは彼女の洗練された身だしなみに心を奪われる。互いに意識しながらもヨミンとウリムは次第に惹かれていく。
つらいことや悲しいこともいっぱい詰まった記憶も、時間というフィルターが美しい思い出だけを濾しとっていく。原作者や監督が自分の少年時代を美化した物語なのはよくわかるのだが、そこに子供ならではのきらめきが感じられない。子供は子供なりに自分の人生や世間とのかかわりを考えていて大人が思うよりずっと深刻な思いを胸に抱えているが、本当は幼さも同居しているのだ。もっと子供らしいアホなことをして大人に怒られるというようなユーモアのあるエピソードを挿入すべきだろう。
ヨミンが母親に怒られるシーンやウリムの別れの挨拶などとても9歳の子供が口にする言葉とは思えない。確かに親に秘密を持ったり自分を守るためにうそをつくこともある。彼らにも人に言えないつらいことがあって、他の子供より精神的な成熟は早いのだろう。それでも9歳の子供が口にする言葉とは到底思えないのだ。エモーショナルに盛り上げようとした結果、あまりにも作意に満ちることになったこのふたつのシーンが、作品全体の雰囲気を壊してしまった。9歳は子供が大人になるには早すぎる。