こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ウォーク・ザ・ライン

otello2006-02-22

ウォーク・ザ・ライン WALK THE LINE


ポイント ★★★
DATE 06/2/18
THEATER ユナイテッドシネマズとしまえん
監督 ジェームズ・マンゴールド
ナンバー 25
出演 ホアキン・フェニックス/リーズ・ウィザースプーン/ジェニファー・グッドウィン/ロバート・パトリック
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


夢と愛、成功の果ての挫折とドラッグ。現代大衆音楽のスターがたどるステレオタイプをこの映画の主人公も忠実になぞる。そして、かつて大ヒットした音楽を忠実に再現することで、オールドファンの懐古趣味を満足させることも忘れていない。しかし、ジョニー・キャッシュという歌手と彼の歌をよく知らない者にとっては、主演の2人がすべて吹き替えなしで歌ったということ以外にそれほどの驚きを感じないことも事実。おそらく、キャッシュのファンにはたまらないサウンドだったのだろうが、ファンではない者への訴求力には欠ける。


幼いころから歌手を夢見ていたジョニーは結婚後セールスマンをしながら生計を立てていた。ある日強引にオーディションを受け、軍隊時代に作った歌で合格、一躍スターになる。そして巡業先で子供のころからのアイドル・ジューンと出会う。ジョニーはジューンを追い求めるがその距離は縮まらず、ジョニーはドラッグに溺れていく。


ジョニーの兄は少年時代に事故死するのが、そのとき父親が弟のジョニーに向かって「お前のほうが死ねばよかった」というような意味の言葉を口にする。「スタンド・バイ・ミー」にも同様のシーンがあるが、本当にこんな言葉を口にする父親が存在することに驚いた。もちろんわが子でもそりの合わないこともあるだろう。しかし、年端の行かない子供に対して浴びせるセリフではないことは明白。ジョニーが成長しても父子間のぎこちない距離感は続くが、ドラッグ中毒になったジョニーを前に父は決定的に決別する。もはや修復不可能で蔑みにも似た感情。どうして父親が実の息子に対してここまで愛情を捨てられるのか、とても疑問に思った。


その後もジョニーは家庭を崩壊させてもジューンを追い求め、絶望と再生を繰り返す。そして伝説的な刑務所でのライブ録音。ここに来てやっとジョニーは自分の人生を肯定的に見つめなおすことができるようになる。ジューンあっての人生、そのことに気づきステージでプロポーズする。ただ、そこに至るまでの道のりのいかに長いことか。確かにホアキン・フェニックス、リース・ウィザスプーンのなりきり演技にはすさまじいプロ意識を感じるが、もっとミュージシャンとしての創作の苦悩やひらめきを描いてほしかった。


↓メルマガ登録はこちらから↓