こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ナルニア国物語 第1章:ライオンと魔女

otello2006-03-03

ナルニア国物語 第1章:ライオンと魔女
THE CHRONICLES OF NARNIA:THE LION,THE WITCH AND THE WARDROBE


ポイント ★★*
DATE 06/2/25
THEATER チネチッタ
監督 アンドリュー・アダムソン
ナンバー 29
出演 ティルダ・ウィンストン/ウィリアム・モーズリー/アナ・ポップルウェル/ッスキャンダー・ケインズ/ジョージー・ヘンリー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


剣が舞い、矢が乱れ飛ぶ合戦シーンが最大の見せ場なのに1滴の血も流れない。さすがはディズニー製のファンタジー、子供が見てもショックを受けないような配慮がなされている。しかし、剣で刺せば流血するし、矢で射抜かれれば激痛が走るということこそ、きちんと子供に教えるべきではないだろうか。いくら空想の世界とはいえ、生の苦しみと死の痛みについてのリアリティが薄すぎる。もしかして、死の概念すら理解できないような年齢の子供に向けて作られた作品なのだろうか。


第二次大戦中、ロンドンから教授の屋敷に疎開してきたピーター、スーザン、エドマンド、ルーシーの4兄弟姉妹は、ある部屋の衣装箪笥の奥にある別世界に迷い込む。そこは白い魔女が支配する冬の国。だが、ライオンの姿をした真の王・アスランが春を取り戻そうと反撃の準備をしたいた。4人はアスランと住人のために闘う決意をする。


箪笥の中がナルニア国に続く秘密の出入り口という設定がロマンチックだ。ここを通過することで現実世界との区別をきっちりつけているために、動物が感情を持って人間と同じ言葉を話すという設定にも無理なく入っていけた。ただ、現実世界がヒトラーとの戦争中という設定だけに、原作が発表された当時ならば圧政に対して立ち上がる民衆と指導者という構図は、ヒトラーに支配された欧州大陸の解放を連想させるが、現代においてその意味は希薄だ。観客の共感を得るためには、箪笥の外の世界を21世紀の紛争地帯にするくらいの脚色は許されるはずだ。


普通の子供が運命の導きによって指導者に祭り上げられ、最初は戸惑いながらも徐々に自分の使命を自覚する。基本的にはそんな手垢のついたストーリーなのだが、やはり主人公が4人では多すぎる。大体、領土を4分割して4人にそれぞれ与えたら、それこそまた兄弟姉妹間で争いが起きるのは目に見えている。また、なぜ白い魔女の支配に甘んじているのかとか、死んだはずのアスランが魔法で生き返ったりとか、ナルニア国の世界観もよくわからない。そのあたり、第2章以降どういう展開になるのか楽しみだが、第1章はお子様向けファンタジーの域を出ていなかった。


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