こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

南極物語

otello2006-03-20

南極物語 EIGHT BELOW


ポイント ★★★
DATE 06/2/9
THEATER ブエナビスタ
監督 フランク・マーシャル
ナンバー 21
出演 ポール・ウォーカー/ブルース・グリーンウッド/ムーン・ブラッドグッド/ジェイソン・ビッグス
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


この映画のために調教された犬たちが視線で問いかける、別れの悲しみ、未知への恐怖、運命への絶望、そして再会の歓喜。それらの感情が時に激しく、時に静かにスクリーンを覆う。もはや俳優たちは脇役でしかなく、人間サイドのストーリーは犬たちを見捨てなければならなかった陳腐な言い訳にしか過ぎない。人間の熱意が強くなればなるほど、南極でたくましく生き抜こうとする犬たちとの気持ちのギャップが大きくなる。やはりこの作品の対象は子供なのだろう、ディテールに対するこだわりはあまりない。


南極基地でガイドを務めるジェリーは隕石調査に来た学者を犬ぞりで案内するが、悪天候で学者が大怪我、さらに基地を撤退することを余儀なくされる。犬を鎖につないだまま置き去りにしたジェリーは自責の念に駆られるが、資金難で救出に向かえない。一方、犬たちは自力で鎖を断ち切り、南極の大地で生きるすべを学んでいく。


犬の訓練、天候が急変する雪原でのロケなど、日本版とは桁違いのカネと手間がかかっていることは容易に想像できる。特に、取り残された犬たちのその後が見所だ。餌を自分たちで調達しなければならなくなったとき、誰にも教わらなかった狩りの技術を身につけていく。カモメを襲い、シャチの死肉をむさぼる。しかし、飼い犬が野生に戻らなければならなくなっても、犬同士の友情は変わらない。人間に対する忠誠心だけでなく、仲間同士の絆の深さもきちんと描きこんでいるところに好感を持てた。


ただ、やはりディズニー映画で、「子供だまし」に感じるシーンも多い。犬たちが迷い込んで基地の鍵が開いていたり、資金集めに奔走するジェリーが何の当てもなくニュージーランドに行くと昔の仲間が待っていたり。極めつけは、冬の南極に太陽の光がやたら多いのだ。ラストシーン、8月の南極で太陽があんな高い位置から地上を照らすことは絶対にありえない。まあ、感動の再会が薄暗い空の下では絵にならないのは理解できるが。。。


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