こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

THE MYTH 神話

otello2006-03-27

THE MYTH 神話


ポイント ★★*
DATE 06/1/30
THEATER UIP
監督 スタンリー・トン
ナンバー 17
出演 ジャッキー・チェン/キム・ヒソン/レオン・カーフェイ/マリカ・シェラワット
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


現代と2200年前の秦の時代を強引に結び付け、絶え間ないアクションと壮大なスケールの合戦シーンで息もつかせぬ展開を観客に提供しようとするジャッキー・チェンのサービス精神はこの作品でも健在。カンフー、剣戟から乗馬まで体を張ったスタントとワイヤーアクション・CGの合成は幻想的な趣すらもつ。しかし、十年一日のごときジャッキーのキャラクターと新味のないVFXはもはや刺激的ですらない。ただ、ジャッキーの元気な姿が見られたことだけが収穫だった。


考古学者のジャックは反重力の力を持つ不思議な隕石を手に入れ、さらに研究を進めていくうちに秦の始皇帝の巨大地中遺跡にたどり着く。一方、秦の武将・蒙毅は王妃を護衛していたが敵襲にあって命からがら逃げ出し、その途中王妃との間に愛が芽生える。ジャックと蒙毅の間には不思議な因縁があった。


圧倒的な人数のエキストラをそろえた合戦シーンにも壮大な地下宮殿での空中戦も、ものすごく手間とカネがかけられているのだが、まったくヴィジュアル的な興奮を呼び起こさない。それはジャッキーが演じるジャック・蒙毅ともにリアリティがなさ過ぎるからだろう。どう見てもインテリには見えないし、武将の鎧兜も似合わない。そうした違和感が過去と現在を行き来するたびに増幅され、ジャッキーの熱意とは裏腹にスクリーンへの集中力を殺いでいく。


やはりジャッキーひとりの肉体に頼りすぎたのが作品のポテンシャルを下げた原因だ。せっかく古代神話の謎解きと宝探しの要素を盛り込んでいるのに、物語の中に生かしきれていない。始皇帝の地下都市にたどり着くまでにもっと関門を設けるとか、自分の使命と王妃への愛の間の葛藤を見せるとか、ストーリーに頭を使うプロットがなければ疲れてしまうのだ。とくに槍や刀で数百人もの敵兵を相手にひとりで戦うジャッキーの超人的な強さには、かえってスクリーンまでの距離を感じてしまった。


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