こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

プロデューサーズ

otello2006-04-12

プロデューサーズ THE PRODUCERS

ポイント ★★★
DATE 06/4/8
THEATER 109シネマズ木場
監督 スーザン・ストローマン
ナンバー 52
出演 ネイサン・レイン/マシュー・ブロデリック/ウィル・フェレル/ユマ・サーマン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


ショービズギョーカイ内幕モノは時として劇中劇のほうがおもしろい。「春の日のヒトラー」、タイトルだけでミスマッチなユーモアを感じさせるミュージカルだ。ゲルマン民族の優位を謳い、全体主義を賞賛するいかにもナチ信奉者が作ったヒトラー賛歌なのに、ヒトラー役をオカマに演じさせるだけで強烈な風刺とエスプリの効いた作品に仕上がっている。むしろ「春の日のヒトラー」の完全版を見たくなるようなできばえだった。


ミュージカルプロデューサー・マックスは会計士・ブルームの「すぐに打ち切られる作品を作れば大もうけできる」という言葉にひらめき、最低のミュージカルを作る決心をする。早速ブルームを仲間にして、脚本、演出家、出演者と最低の連中をリクルートしていく。


歌と踊りで楽しいムードを盛り上げ夢のような世界を表現するというミュージカルの形だけを借りて、中身はこの業界のナンセンスを皮肉ったコメディ。そんな内容を大真面目に作り、エンタテインメントにまで昇華させるところが米国の懐の深さ。特に上司にこき使われ自分を見失っていたブルームが、夢にかけてみようとマックスと手を組むというエピソードを挿入することで物語に普遍性を持たせるなど、細部の芸も細かい。ブルームというキャラクターを配することで、素人がショービジネスという異常な世界を実体験するというパターンでなじみやすくする工夫も忘れていない。


結局、最大の失敗作になるはずが思わぬ反応で逆に傑作と評され大ヒットする。登場人物すべてがお約束のハッピーエンド。ヒトラーに対する嫌悪感をゲイというフィルターを通して描くことで中和し、思想信条的にも角が立たないように工夫する。見た目の楽しさ面白さ以上に、隅々にまで神経の行き届いた娯楽作品だった。ただ、ユマ・サーマン扮するウーラというキャラクターに必然性がなく唐突だったことに少し違和感を覚えた。


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