こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

タイフーン

otello2006-04-18

タイフーン


ポイント ★*
DATE 06/4/9
THEATER ワーナーマイカル新百合ヶ丘
監督 クァク・キョンテク
ナンバー 53
出演 チャン・ドンゴン/イ・ジョンジェ/イ・ミヨン/
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


タイからウラジオストックまで、東アジアをまたにかけたアクションはスケールばかり大きくて中身は大味。南北朝鮮双方に深い恨みを持つ男の復讐といっても、戦力は10人程度の海賊と自動小銃。これで国家権力を相手にすること自体噴飯モノなのに、チャン・ドンゴン扮する主人公のメンタリティも幼稚そのもの。資金の出所も曖昧だし、大体子分の命を自分の私怨を晴らすために賭けさせるなどリーダーのすることではない。仕掛けにカネをかけるより、もっと脚本にカネと労力をかけるべきだった。


台湾沖で輸送船がシンというボスに率いられた海賊に襲われ米軍の秘密兵器が奪われる。韓国情報部は特殊工作員・カンにシンの身辺調査を命じる。シンはかつて脱北者で韓国に亡命しようとしたが、韓国政府の裏切りで姉を除く家族全員を殺されていた。カンはシンの姉を確保するためにウラジオストックに飛ぶ。


シンの南北朝鮮国家に対する深い恨みは理解できるのだが、だからといって朝鮮半島全域を放射能で汚染させようなどと考えるのは、狂人の発想としか思えない。しかも自分の家族を殺されたことに対しては深い恨みを抱き続けているくせに、その復讐のためには平気で無関係な非戦闘員を殺していく。傷を負った顔と餓えた狼のような視線は、強靭な精神でどんな苦難も乗り越える男というキャラクターを確立しているが、はっきり言ってただのアホ。こんなやつに子分が命を預けるなどリアリティのかけらもない。


放射性物質朝鮮半島にばら撒くのに使うのが風船爆弾。なんと輸送船で海上から大型台風に乗せて朝鮮半島上空まで運ぼうというのだ。そしてそのボロ船を殲滅しようと大時化の海に特殊部隊が出撃する。いつの間にか敵味方のはずのシンとカンの間に友情まで芽生えている。もはや笑いを取ろうとしているのかと勘繰りたくなった。ウラジオストックでの人質奪還戦などスリリングなシーンもあったが、全体的に大味で散漫な作品だった。


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