こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

V フォー・ヴェンデッタ

otello2006-04-26

V フォー・ヴェンデッタ V FOR VENDETTA

ポイント ★★*
DATE 06/4/22
THEATER 109シネマズ港北
監督 ジェイムズ・マクティーグ
ナンバー 60
出演 ナタリー・ポートマン/ヒューゴ・ウィービング/スティーブン・レイ/ジョン・ハート
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


笑顔が張り付いたような仮面の男が洗練された身のこなしとナイフさばきで警官たちをなぎ倒す。一方でシェイクスピアの引用を多用して言論の自由をはじめとする「人間の自由」を説く。彼の理念は崇高で行動は迅速、そして正体は不明。表情を見せられないから能弁になり、言葉にできない感情は指先と背中の動きで表現する。しかし、現れたと思えばすぐに姿を消すその神出鬼没さにはリアリティが伴わず、その存在は幽霊のよう。テロ活動における侵入・脱出経路などをもう少しきちんと描かないと、仮面の男は独裁者に取って代わろうとする公安のトップが作り出した大衆を抑圧するための幻影のようにも見える。


全体主義に支配されたイギリス。OLのエヴィーはある日外出禁止令を破ったところを暴漢に襲われるが、Vという仮面の男に救われる。Vは反政府テロリストで、裁判所を爆破したあとTV局ジャックを行って大衆に蜂起を呼びかける。


独裁者によるアジテーションと秘密警察やカメラによる監視。人々の生活は抑圧され、人権は制限されている。あまりにもステレオタイプのどこかで見た風景の羅列。そんな世界でVはひとり権力と戦うのだが、あれほどの大掛かりな仕掛けを単独では実行できまい。いくら人体実験の結果超人的な身体能力が身についたとはいえ、資金源・協力者なしでは不可能。荒唐無稽なファンタジーとはいえ、発想が幼稚すぎる。


しかも、Vはエヴィーの死んだはずの父だったというオチまでつく。エヴィーの精神力を試すために壮絶な拷問まで加えるのに。ここまでやると、ドンデン返しのための設定としか思えない。ラスト近くVと同じ扮装の大衆が通りを埋め尽くすシーンは、同じくヒューゴ・ウィービングが演じた「マトリックス・レボリューションズ」の無数に増殖したエージェントスミスを想起させるが、この映画の結末はイマジネーションを刺激するほどのものではなかった。監視カメラが街中に設置されるようになった今日この頃、仮面をかぶっていなければ自由でいられないというVの言葉だけは納得できたが。。。


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