こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

僕の大事なコレクション

otello2006-05-08

僕の大事なコレクション EVERYTHING IS ILLUMINATED


ポイント ★★
DATE 06/5/3
THEATER アミューズCQN
監督 リーブ・シュライバー
ナンバー 65
出演 イライジャ・ウッド/ユージーン・ハッツ/ボリス・レスキン/ラリッサ・ローレット
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


シリアスなテーマをコミカルに描くことでよりその問題点を明確に浮き彫りにする手法は悪くないのだが、視点を絞り込まなければ散漫な印象になる。語り部となるのは米国人青年かと思えば、彼を迎えるウクライナ青年になったり、最後には偏屈爺さんが物語の主観になってしまう。ほとんどの観客は当然米国人に感情移入して、彼が見たものや体験したことに対する驚きに共感するのだから、ウクライナ人コンビのエピソードは客観で描くべきだった。映像の主観の転変が必要以上に混乱を招き、とらえどころのない作品になってしまった。


家族に関するあらゆるものをコレクションするのが趣味のジョナサンは、ある日いまわの際にある祖母から、若き日の祖父と見知らぬ女性が写った写真を貰い受ける。ジョナサンは祖父の形見のバッタのブローチと共にウクライナにルーツを探す旅に出る。ウクライナではアレックスという青年と彼の祖父が待っていた。


登場人物の性格を表現するためのさまざまな設定がまったく物語りに生かされていない。ジョナサンはコレクターである必要はないし、アレックスの祖父が盲目を偽装している理由や変な名前の犬の存在も不明。さらに60年近くも独ソ戦が終わったことを知らない老婆まで登場する。それら人物像の初期設定が大団円を迎えるにあたって伏線となって生きておらず、大上段に構えたわりには腰砕けの結果に終わっている。


結局、写真には第二次大戦中独軍によって殲滅され地図から消されたユダヤ人集落の秘密が隠されていたことが、ひまわり畑にひとり隠棲する老婆の記憶から明らかになる。ジョナサンの祖父もアレックスの祖父もその集落出身で、2人のルーツは同じ場所だったということだ。描きたかったのは戦争に翻弄されたユダヤ人の運命なのか、人間の不思議な縁なのか。あまりにも少なすぎる手がかりにイマジネーションは置き去りにされ、美しすぎるひまわり畑ばかりが印象に残った。


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