こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

the EYE 3

otello2006-05-09

the EYE 3 見鬼10法

ポイント ★*
DATE 06/3/14
THEATER 映画美学校
監督 パン・ブラザーズ
ナンバー 38
出演 チェン・ボーリン/イザベラ・リョン/ケイト・ヤン/クリス・クー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


「2」同様、内容は「目」とは何の関係もないホラー。しかもこの作品は、もはやホラーというよりコメディといったほうがよい。一応、おどろおどろしい効果音や黒ずんだ肌の幽霊が突然現れて怖さを演出しているが、それは単にびっくりさせているだけで恐怖感とはまったく無縁。もし監督が本気で怖い映画を作っているつもりならば、その意図はまったく的外れ。観客を笑わせようとしているのならば、そのユーモアのセンスは洗練とは程遠い位置にいることは確かだ。


タイに旅行中、「幽霊を見る10の方法」という本を手に入れた香港の若者グループ。実際に本に書いてある方法を試すうちに1人が冥界から戻れなくなる。残ったタクとメイは香港に帰っても霊現象に悩まされ、もう一度タイに戻って冥界を訪問する。


幽霊そのものは人間に対して悪意を持っているわけではなく、人間の側が一方的に怖がっているだけだ。もちろん冥界を面白半分に覗こうとする人間を引きずり込もうとはするが、強烈な恨みや現世への執着心を持っていないから積極的に襲ってくるわけではない。それがわかっているからいくらカメラワークや音響に力を入れても、「死んだ人間の怨念が生む超常現象」というより、生き残った人間が幻覚を見ているとしか思えないのだ。もっと皮膚感覚に訴えるような恐怖感を演出しないと、ホラー先進国・日本では誰にも相手にされないだろう。


ホラーの基本は無念の死を余儀なくされた人間(時に動物)が、自分の命を奪ったものもしくは生きているもの全員に対して復讐を果たそうという強固な思い込みだ。それががあって初めて背筋が凍るもの。この作品のように、幽霊の側に自分の命が奪われたことに対する人間への憎しみがないのなら、墓場で肝試するほうがよほど怖さを味わえるだろう。まあ、冒頭の若者5人の怖い話を出し合うシーンに象徴されるように、こわ〜い話に笑えるオチをつけるというのがこの映画のテーマだったのかもしれない。実際、幽霊に取り付かれてブレイクダンスをするシーンは笑えたし。。。


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