こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

さよなら、僕らの夏

otello2006-06-20

さよなら、僕らの夏 MEAN CREEK


ポイント ★★*
DATE 06/4/16
THEATER 映画美学校
監督 ヤコブ・アーロン・エステス
ナンバー 58
出演 ローリー・カルキン/ライアン・ケリー/スコット・ミシュロウィック/トレヴァー・モーガン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


取り返しのつかない過ちを犯してしまったとき、人はどういう行動を取るか。事実を隠そうとする者、自分だけは助かろうとする者、良心の呵責に耐えられなくなる者。たとえそれが子供であっても、心によぎる思いは大人と変わらない。悪意を持ってクラスメイトを死なせれば、いつかは発覚する。それでも何とかその場を取り繕いたい。映像は一線を越えてしまったあとは世界はこんなにも変わるということを、少年たちの微妙な心理を踏まえて鋭く切り取っていく。


サムはジョージという同級生にいじめられていた。ある日、サムの兄・ロッキーは友人3人とジョージを懲らしめる計画を立て、サムのガールフレンドを加えた5人でジョージを川下りに誘い出す。


体がでかく性格も悪いデブのジョージは誰にでも嫌われるいやなやつ。多くの人間から嫌われて、その報いを受けるのも当然と思わせる。その一方でサムのバースデープレゼントを用意していたりと、まったくのバカではない。ジョージのポジションは「懲らしめなければならないが死なせる必要はない」というところ。だからこそサムは彼への制裁をためらい、中止しようとする。憎くて仕方ないのにいざ行動するときになって躊躇してしまう、そんな少年の心の動揺が繊細なタッチで描かれる。


結局、ジョージは溺れ死に、一度は死体を隠したあとサムたちは自首する。美しいはずの小川の風景は粒子の粗いフィルムで撮られているのに、自首したあとのイメージは一転して鮮明になる。サムはジョージの死を通じて自分の人生を見つめなおし、過去に対する真摯な姿勢を見せようという演出は危うい効果をあげている。ただ、発見されたビデオに映っていたジョージの姿は何のメタファーだったのか。ここでもジョージは思い上がったバカにしか見えないが、それでも殺したくなるほどでもない。いじめる側の人間も根っからの悪人ではないということを言いたかったのだろうが、中途半端な印象しか残らない。やはり「殺されて当然」なのか「ホントはいいやつ」なのか旗幟鮮明にすべきだった。


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